パワーストーンよもやま話B

赤にも色々ありまして


 赤という色は、とっても派手な色のため、昔から重要視されてきました。
 色々な元素が赤色の発色に関係していますが、その中でも産業用として割と重要なものをチェックしてみました。


ルビー(紅玉)の輝き

 赤い石の代表は、ルビーですね。
 ルビーの基本成分はサファイアと同じ酸化アルミニウム(Al2O3)ですが、赤い色は、微量のクロム(Cr)が含まれているのが原因ですね。

・ルビーの赤い色に要注意

 ルビーといえば、鮮やかな赤い色が命です。でも、天然の赤いルビーには、輝くような赤い色をしたものは極めて少ないのです。ではどうするかというと、熱処理をしてしまうんですよね。いいのかな?

・ルビーと言えばレーザだけど

 さて、ルビーの産業応用ですぐ思いつくのが、ルビーレーザ。
 実は、世界で初めて作られたレーザが、このルビーレーザなのです。
 実際のレーザに使われているのは、「ルビー」と呼べるほど赤くはなく、「ピンク・サファイア」に分類される程度の色の薄いものなのですが、なぜか一般的に「ルビーレーザ」と呼ばれています。今では人工的に作られた「ピンク・サファイア結晶」がルビーレーザ素子として使われています。 このタイプのレーザは、今でもまだ現役で使われていますが、発光効率があまり良くないのと、連続した光が出せない(パルス光のみ)ので、徐々に他のレーザ(YAGレーザなど)に置き替わっているのでした。

ガーネット(ざくろ石)は合成品に特徴あり

 ガーネット( garnet)は、ガーネット(ザクロ石)族に属する一群の鉱物の総称で、色はその組成によって異なりますが、赤・橙・白・黄・黄緑・緑・褐・黒色などがあります。鮮やかな赤色で有名なものはパイロープ(Mg3Al2Si3O12)、アルマンディン(Fe3Al2Si3O12)があります。
 硬度がそこそこ高いので、昔から研磨材として使われており、褐色の紙やすりは、ガーネットの小さい結晶が使われています。
 ガーネットって、結構、地味な存在なんですよね。

・人工ガーネットの産業利用

 天然のガーネットは人工的にも合成可能ですが、実は天然には産出しない人工合成のガーネットに、利用価値の高いものがあります。
 人工的に作られたガーネット族の結晶、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)、通称YAGと呼ばれるガーネット結晶中に、ネオジム(Nd)という元素を少量入れたものは、極めて強力で使いやすいレーザ源となるため、色々な分野で使われています。
 また、イットリウム・鉄・ガーネット(Y3Fe5O12)、通称YIG結晶は、磁性材料などに利用されていますし、その他にも様々な稀少元素を使った人工ガーネット結晶が合成されており、様々な特性を持つので色々な特殊用途(主に電気光学素子)に使われています。

ルチル(金紅石)は見えないところで目立って活躍

 ルチルの成分は、二酸化チタン(TiO2)で、チタンの酸化物です。ルチル・クォーツを知っている人は、あの金や銀の針が、このルチルであることは知っていますね。
 ルチルの単結晶の大きなものは、赤が濃く、暗赤色もしくは褐色をしています。

・ルチルは光を反射する

 ルチルの特徴は、その屈折率の高さにあります。ダイアモンドをしのぐ高さで、一般に使われる光学材料としてはトップクラスですので、それを利用して色々な用途に使われます。最もポピュラーなのは、光を反射させる膜の材料とするものです。(屈折率が高いと、光を反射しやすいのです。)
 普通の鏡は、金属アルミニウムを反射膜に使っているものが多いのですが、これはいくらかの損失があります。一方、ルチルの膜と他の成分の膜を使った「誘電体多層膜」というものを使うと、ほとんど全ての光を反射してしまう膜を作ることができますし、特定の色の光だけを反射したり透過させるようなことも可能になります。
物質の屈折率
水晶 1.5
サファイア 1.8
ダイアモンド 2.4
ルチル 2.6-2.9
 ルチルの光の反射を利用した用途で身近なのは、紫外線カットの日焼け止め化粧品に入っている白色パウダーです。実は、この日焼け止めの白色パウダーは、ルチルの粉末なのです。あと、白色塗料としても有名で、チタンホワイトと呼ばれる顔料も、これなのです。

・光触媒はルチルの仲間

 ルチルではありませんが、ルチルと同じ二酸化チタンを成分とするもので、結晶形の違うアナターゼ(鋭錐石)というのがあり、これは光触媒作用を持っており、これを応用した製品がぼちぼち出ているようです。

朱(辰砂)に交われば赤くなる正体

朱 (vermilion)の成分は、赤色硫化第二水銀(HgS)で、天然には辰砂(シンシャ)として産出し、古代より顔料や医薬原料として利用されています。天然物は純度が低いので、朱から水銀を取り出して、純度の高い朱を合成することも、かなり昔から行われています。水銀が含まれてはいますが、毒性はそれほど強くないので、医薬品にも使われていました。だからといって常用するのは、ちと怖いですね。
 現代では、水銀化合物は毒性がある(有機水銀中毒の水俣病は有名)ので、その使用量は控えめ気味ですが、まだまだ利用価値は高いものです。

・水銀と錬金術

 ちなみに、水銀というと錬金術のネタですね。
 産業的には、ヘルメス容器(密閉反応容器)に水銀、硫黄、アルカリを原料として入れ、水蒸気を吹き込みつつ加熱反応させると,まず黒色の硫化水銀が生成し、次いで赤色硫化第二水銀に変化しますが,アルカリをカリウムにするかナトリウムにするかにより,また温度の変化によって、赤から黄までいろいろな色調のものが得られるので、これから様々な色の顔料が得られたりするのでした。

ちと脱線・・・鉄、赤い色の正体

 色のついた石の多くは、石の基本成分が赤色をしているのではなくて、不純物が入って色がついているものが多くあります。
 その不純物の中で最も多いのは、鉄イオンです。鉄イオンが原因で色が付いている石を、以下に示します。
石の名前 基本成分
レッドジャスパー
赤めのう
SiO2(石英)
アメシスト SiO2(水晶)
アクアマリン Be3Al2Si6O18(ベリル)
イエローカルサイト
シトリン
CaCO3(方解石)
SiO2(水晶)
ペリドット (Mg,Fe)2SiO4(かんらん石)
 鉄イオンの混入により、様々な色が発現しますが、石以外にも色を付けることもできますね。
 たとえば、人間の血が赤いのは、ヘモグロビン中の鉄イオンの色であり、青インクや青写真も、鉄イオンの色です。
 昔のガラスがうすい青緑に着色しているのも、実は鉄イオンが原因なのでした。
 七色に変化する鉄イオンの色。なかなか神秘的ではありますね。

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