パワーストーンよもやま話G

黒いヤツらの底力


 黒い石は、ブラック・パワーというのにふさわしい力持ちです。
 どんな力があるかを紹介しましょう。


ヘマタイト(赤鉄鉱)

 成分は、三二酸化鉄(Fe2O3)で、鉄の原料である鉄鉱石の中でも、最も大量に使われているものです。
 ヘマタイトの色は赤・茶褐色・黒色などで、磨くと銀色に光るものも多いのですが、粉末にすると赤茶色になります。粉末状のものはベンガラと呼ばれ、赤色の塗料や研磨剤などに使われています。

・情報社会を支えるヘマタイトの兄弟たち

 現代では、成分が同じで結晶タイプの違うもの(ヘマタイトはα型、酸化鉄磁性体はγ型がメイン)が合成され、磁気記録用の磁性体(テープなど)として使われています。現代の情報社会において、大量の情報を蓄える媒体として活躍しているというのも、面白いですね。
 また、現代社会で使われる磁石に、フェライト磁石というものがあります。これは、化学式 MO・Fe2O3で表される焼結磁性材料(Mは金属)で、安価なのと色々な形に作りやすいので、永久磁石や高周波電子機器の磁性体として広く使われています。
 また、電波を吸収する性質もあるので、電磁波妨害を防ぐ目的にも使われるのでした。パソコンにも、黒い「フェライト・コア」として、たくさん使われています。

マグネタイト(磁鉄鉱)

 成分は、四三酸化鉄(Fe3O4)で、色は黒で、今でも重要な鉄鉱石の一つであり、砂鉄の成分も、これです。
 なぜか、一部のバクテリアなどの生物中にも存在しています。
 マグネタイトという名前の通り、天然に存在する鉱物中では最も磁力が強く、天然の磁石となっているものは、昔から航海を助けるものとして、貴重で有用な存在なのでした。

オブシディアン(黒曜石)

 火山の回りにある、天然ガラスでできた岩石で、色々な成分が混在しているため、黒色ないし灰黒色です。
 黒曜石は割ると鋭利な割れ目を得やすいので、先史時代には石器として利用されてきましたが、ガラスが人工的に作れるようになった現代では、利用価値はほとんど無いのでした。
 でも、現代社会を支えるガラスの天然モノという意味では、それなりに存在価値はあるように思いませんか?

ジェット(黒玉)

 ジェットは、成分が炭素(C)で、石炭の兄弟分です。純粋化と結晶化が進んだものは、グラファイト(石墨)となりますが、さらにダイアモンド化することは、普通はありません。

・石炭はまだまだ現役

 ところで、半貴石扱いされるジェットはともかく、もっと大量に採れる石炭は現代の産業上でも重要な位置を占めます。エネルギー源としても化学原料としても、まだまだ現役ですし、埋蔵量も多いので、これからも使われていくでしょう。

・グラファイトは、先端技術を支える物質

 石炭と同じように、グラファイトも有用な鉱物です。酸素のない雰囲気では融点が高いのと、電気を通すので、エジソンの電球のフィラメントに使われたのは有名な話です。電気を通し化学的にも安定で潤滑性にもすぐれているため、電極材料、耐熱塗料、容器、潤滑剤、鉛筆の芯などに使われています。また、原子炉用の中性子減速材や反射材などにも使われており、幅広い用途があります。このため、現在では工業的に製造された人造グラファイトが多く使用されています。
 あと、近頃注目されているカーボン・ナノチューブという物質も、グラファイトの仲間なのでした。

ちと脱線・・・黒い石が生み出した現代産業

 鉄鉱石と石炭を混ぜて加熱すると、鉄ができます。
 近代産業革命は、黒光りする蒸気機関車とそれを走らせる石炭に象徴されるように、エネルギー源となった「石炭」と、機械や建築を支えた「鉄」が主役なのでした。
 とはいえ、鉄はもっと古代から利用されていますし、もっと昔には、オブシディアンが石器として使われていました。
 また、現代においても、初期の原子炉にはグラファイトが大量に使用されていますし、鉄やその化合物は、いまだに大量に使われています。
 つまり、黒い石は、ずっと昔から現代に至るまで、人間の文明を支えてきた存在といえるでしょうね。
 人は、きれいなものや稀少価値のあるものに目を奪われがちですが、本当に人にとって重要でかけがえのないものは、身近にあって目立たないものであることが多くあります。
 もっともっと縁の下の力持ちである黒い石たちの存在を知ってもらいたいですね。

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