ライダーウェイト・タロット解説

§3 Conclusion as to the Greater Keys
大いなる鍵に関する結論


There has been no attempt in the previous tabulation to present the symbolism in what is called the three worlds--that of Divinity, of the Macrocosm and the Microcosm.
3つの世界、すなわち「神界」、「マクロコスモ」、「ミクロコスモ」と呼ばれているものについての象徴性を示す図表化の試みは、以前には無かった。

 ウェイト氏は、自らの作品であるライダーウェイト版タロットは、世界で初めて、神界、マクロコスモ、ミクロコスモの3つの世界を統合して記述した図表(すなわちカード)として完成させたもの、と自慢している文章ですね。
 ちなみに、
  ・神界 … 神話、神学の神秘世界
  ・マクロコスモ … 宇宙の神秘世界
  ・ミクロコスモ … 人間精神の神秘世界
ということです。

A large volume would be required for developments of this kind.
かなりの文献が、この種の開発のために必要とされたであろう。

 ちと婉曲表現ですが、大量の書物を参考にして、このタロットという作品を作り上げたという、自慢の文章ですね。
 その文献については、簡単な解説付きで、この本の巻末の参考文献目録に29冊も掲載されています。
 この『The Pictorial Key to the Tarot』って、なかなかの力作なんですよね。

I have taken the cards on the high plane of their more direct significance to man, who--in material life--is on the quest of eternal things.
私は、カードには、人間をそれらのより直接的な重要性の高い面へと向かわせると理解しており、そして、その人間は、…物質的な人生において…、永遠なるものの探求に向かう人物である。

 「material life/物質的な人生」というのは、現実世界で生きる人を示しています。
 空想的な仮想人物でもないし、精神世界で生きる聖職者でもない、ということですかね。
 つまり、一般人ではあるけれども、より高い次元を目指す人のために、深遠なる精神世界を解説したということですね。

The compiler of the Manual of Cartomancy has treated them under three headings: the World of Human Prudence, which does not differ from divination on its more serious side; the World of Conformity, being the life of religious devotion; and the World of Attainment, which is that of "the soul's progress towards the term of its research."
「カード占いの手引き書」の編集者は、3つの方向付けの下で、それらを扱っていた。
 「人間の思慮分別の世界」、それはそのより真面目な面において、占いとはさほど異なっていないもの。
 「信奉の世界」、それは宗教的な献身の生活に存在するもの。そして、
 「到達の世界」、それは「その研究の期限に向かう魂の発達」のもの。

 この『Manual of Cartomancy/カード占いの手引き書』というのは、一般的な占いの入門本という意味と、以前にウェイト氏がグランド・オリエント名義で出版した『占いの手引き書』という本のことを指していると思われます。
 そして、この手の本の編集指針が、ここに示された3つの世界を記述するということですね。
 この3つの世界というのは、
  (1) 一般の理性ある人間が、理解できる言葉で書かれたもの。
  (2) 宗教を深く信仰する者が、理解できる言葉で書かれたもの。
  (3) 精神世界を深く探求する者にのみ、理解できる言葉で書かれたもの。
ということになります。
 つまり、これらの記述のバランスをよく考えて、本が書かれるということですね。
 一般(占い)読者向けの入門書であれば(1)を詳しく、上級読者向けの実用書であれば(2)、研究者向けの専門書であれば(3)をメインに記述していくことになります。
 また、(3)を起点に、(2)や(1)について言及していくという流れもあります。

He gives also a triple process of consultation, according to these divisions, to which the reader is referred.
彼はまた、これらの区分に従って、読者の参考になるように、三重の協議の過程を得ます。

 この「彼」というのは、占い本の編集者のことです。
 通常の占い本の編集は、この3つの編集方針に従って、読者の利便性を考え、協議を重ねて編集するんだよ、ということですね。

 また、「reader/読者」というのは、「本の読者」という意味と、「カードの意味の読み取り」と「カード占い師」という3つの意味を持ちます。
 占い用途の本であれば、そういうことになりますよね。

I have no such process to offer, as I think that more may be gained by individual reflection on each of the Trumps Major.
私は、そのような提案の過程を行わない。というのは、私は、より多くのものが、大アルカナの各々の個々の熟考によって得られるであろうと考えているからである。

 ウェイト氏は、上に述べたような、一般的な編集方針に従わず、読者(占い師)自身で、カードを読み取って、答を導き出してほしいと考えているようです。
 つまり、大アルカナには、模範解答みたいな「著者の意図したカードの意味」は、あえて付けないということです。

I have also not adopted the prevailing attribution of the cards to the Hebrew alphabet--firstly, because it would serve no purpose in an elementary handbook; secondly, because nearly every attribution is wrong.
私はまた、カードをヘブライ語アルファベットに帰因させる流行も採用していない。第1に、それは基本的な手引書という目的に役立たないからであり、第2に、ほとんどすべての帰属が間違っているからである。

 当時、22枚の大アルカナを、22文字のヘブライ文字に対応させることが流行していました。
 ウェイト氏は、まだそれは研究途上であり、時期尚早だと考えていたようです。
 ただ、ウェイト氏は、ライダーウェイト版の大アルカナとヘブライ文字との対応は、一応配慮しているようですが、その対応関係は、この本の中では明らかにはされていません。

Finally, I have not attempted to rectify the position of the cards in their relation to one another; the Zero therefore appears after No. 20, but I have taken care not to number the World or Universe otherwise than as 21.
最後に、私はお互いに対するカードの関係でカードの位置を調整しようとしませんでした。「0番(愚者)」はしたがって、「20番(審判)」の後に出現している。しかし、私は、「世界」または「宇宙」を、どちらかというと21番としておくように注意した。

 「0:愚者」には、0の番号が付けられていますが、その出現する順番については、あえて考慮していないようです。
 たぶん、当時の研究状況では、まだ順番が確定できていなかったのでしょう。
 一方、「21:世界」は、21番のままにしておきたいようです。
 なお、現在では、ゴールデン・ドーン流に、「0:愚者」のカードは最初に配置して、0,1,2,・・・,20,21というように数字の順に並べるのが一般的です。 

Wherever it ought to be put, the Zero is an unnumbered card.
それがどこに置かれるべきであっても、「0番」は番号が付けられないカードである。

 「0:愚者」には、とりあえず「0」という番号が付けられて、この場所に置かれているけれども、後の研究で、どの場所にするかが決まっても、他の大アルカナと同じように扱えるものではない、ということです。
 つまり、「0:愚者」のカードは、大アルカナとは別の次元にあるということですかね。

In conclusion as to this part, I will give these further indications regarding the Fool, which is the most speaking of all the symbols.
この部に関する結論として、全ての象徴の中でも最も多くを語っている「愚者」に関して、私はこれらの更なる兆候を与えるだろう。

 「this part/この部」というのは、この「PartU The Doctrine Behind the Veil/ベールに隠された教義」を指します。
 また、「全ての象徴/all the symbols」というのは、大アルカナ全体を指します。
 つまり、ウェイト氏は、「0番:愚者」のカードが、大アルカナの中でも最も重要なポジションを持つと考えているのです。

He signifies the journey outward, the state of the first emanation, the graces and passivity of the spirit.
彼(愚者)は、外側への旅、最初の放射の状態、精霊の恩寵と受動性を意味している。

 理解の難しい文章ですが、「journey outward/外側への旅」とは、内なる神域から外部の世界へと神の力が出現することを示しています。
 また、「graces and passivity of the spirit./精霊の恩寵と受動性」は、神の力というのは偉大な恵みであり、抵抗できないことを示しています。

His wallet is inscribed with dim signs, to shew that many sub-conscious memories are stored up in the soul.
彼の財布には、よく見えない記号が刻まれている。それは、多くの潜在的な記憶が魂の中に蓄えられていることを示している。

 「wallet/財布」は、彼が持っている小さなカバンのことです。
 それは、魂の持つ「潜在的記憶の入れ物」ということですね。

 大アルカナというのは、この「潜在的記憶」を象徴していると考えられています。
 つまり、「0:愚者」のカバンの中身から、残りの全ての大アルカナが創造されたということを暗示しているのかもしれませんね。


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