ライダーウェイト・タロット解説

§8 AN ALTERNATIVE METHOD OF READING THE TAROT CARDS
タロットカード占いの代わりの方法


 ウェイト氏は、伝統的なケルティック・クロス・スプレッドの他にも、当時としては新しい占い方法である、ジュリア・オルシーニ女史の占い方法を紹介しています。 

Shuffle the entire pack and turn some of the cards round, so as to invert their tops.
デッキ全体をシャッフルし、カードの上下を逆にするために、カードのいくつかをぐるりと回しなさい。

 「pack/デッキ(カードの一組)」は、イギリス用語ですね。
 アメリカでは、カードの一組は「deck」と呼ばれ、日本でもタロットについては、通常は「デッキ」と呼ばれています。 

Let them be cut by the Querent with his left hand.
質問者に、彼の左手で、それらをカットさせなさい。

 シャッフルして、山にしたカードを、質問者にカットしてもらうということですね。
 この辺りの手順については、詳しくは書かれていないので、自己流にアレンジしてもいいと思います。

Deal out the first forty-two cards in six packets of seven cards each, face upwards, so that the first seven cards form the first packet, the following seven the second, and so on-as in the following diagram:--
最初の42枚のカードを、表を上向きにして、最初の7枚のカードが1番目の山を作り、続く7枚が2番目というように、以下の図表のように、それぞれ7枚のカードから成る6つの山に分配しなさい。

 この図は、占い作業者から見た図になります。
 シャッフルされカットされたデッキを一組にまとめた後、右側から左側へと、7枚ずつ表向きで、6つの山に分配します。

Take up the first packet; lay out the cards on the table in a row, from right to left; place the cards of the second packet upon them and then the packets which remain.
1番目の山(1st packet)を取り上げなさい。テーブルの上に、右から左へと一列にカードを展開しなさい。2番目の山(2nd packet)のカードをそれらの上に、それから残りの山も乗せなさい。

 最初に作った6つの山とは、また違う列を作っていきます。
 まず最初の山(1st packet)を取り、右から左へと一枚ずつ並べていきます。
 これにより、新しい7つの山の列の基礎ができます。
 そして、残りの最初に作った山も、順にこの新しい山の列へと移していきます。
 最終的に、テーブルの中央にカードを展開するスペースを確保したいので、新しく作る列は、占い作業者の手元近くがいいと思います。

You will thus have seven new packets of six cards each, arranged as follows--
こうして、以下のように配置された、それぞれ6枚のカードの7つの新しい山になるだろう。

 それぞれ6枚のカードからなる、7つの山(packet)ができました。
 ここから、最終的な展開に入ります。
 ちょっとややこしいので、間違えないように。

Take the top card of each packet, shuffle them and lay out from right to left, making a line of seven cards.
それぞれの山の最上のカードを取り、それらをシャッフルして、右から左へと展開し、7枚のカードの列(line)を作りなさい。

 2番目に作った7つの山の列とは、また違う列を作っていきます。

 それぞれの山から、てっぺんにあるカードを1枚ずつ集めて、それをシャッフルした後、右から左へと横1列に並べます。
 これが、最終的な第1列目(1st line)となります。

Then take up the two next cards from each packet, shuffle and lay them out in two lines under the first line.
次に、それぞれの山から、次の2枚のカードを取り、シャッフルして、それらを最初の列の下の2つの列に展開しなさい。

 1列目と違って、それぞれの山から2枚ずつ、合計14枚のカードを取って並べていきます。
 並べ方も2列となるので、第1列目(1st line)の下に第2列目(2nd line)として右から順に7枚、それから第3列目(3rd line)として同様に右から順に7枚並べます。
 ここまでで、合計して3列の並びができることになります。

Take up the remaining twenty-one cards of the packets, shuffle and lay them out in three lines below the others.
山に残っている21枚のカードを取り、シャッフルして、他のものの下に、3つの列(line)にそれらを展開しなさい。

 最後は、それぞれの山の残り3枚のカードを全部、合計21枚のカードを取って並べていきます。
 並べ方は3列となるので、第3列目(3rd line)の下に第4列目(4th line)として右から順に7枚、それから第5列目(5th line)として右から順に7枚、最後に第6列目(6th line)として同様に右から順に7枚並べます。
 これで、合計して6列の並びができることになります。

You will thus have six horizontal lines of seven cards each, arranged after the following manner.
こうして、方法に従った後に配置された、それぞれ7枚のカードの6列の水平な並びを得るであろう。

 見ての通りの並びになりましたでしょうか?

In this method, the Querent--if of the male sex--is represented by the Magician, and if female by the High Priestess; but the card, in either case, is not taken from the pack until the forty-two cards have been laid out, as above directed.
この方法では、質問者は、…もし男性であれば…「魔術師」により代表され、女性であれば「高等女司祭」に代表される。 しかし、どちらの場合においても、上記で指示したように42枚のカードが広げられるまで、そのカードはデッキから取られない。

 質問者を象徴するカードは、男性は「1:魔術師」、女性は「2:高等女司祭」になります。
 ただし、この象徴カードは、前述のケルティック・クロス・スプレッドの場合とは異なり、事前に抜き出しておかず、デッキ全部を使って展開していくということですね。

If the required card is not found among those placed upon the table, it must be sought among the remaining thirty-six cards, which have not been dealt, and should be placed a little distance to the right of the first horizontal line.
もし、テーブル上に配置されたものの中に要求されたカードが見つけられないなら、それ(象徴カード)は、配置されていなくて、残りの36枚のカードの中で探さなければならない。そしてそれ(象徴カード)は、1番目の水平な並びの右に、少し距離をおいて置かれるべきである。

 象徴カードが、展開された42枚の中に無い時は、まだ展開されていない残りの36枚のカードの中から探して、最初の並びの右に、ちょっと離して置いておくということですね。

On the other hand, if it is among them, it is also taken out, placed as stated, and a card is drawn haphazard from the thirty-six cards undealt to fill the vacant position, so that there are still forty-two cards laid out on the table.
その一方で、それ(象徴カード)がそれらの中にあるなら、それ(象徴カード)はまた取り出されて、述べられたように置かれる。そして、テーブルに展開された42枚のカードがまだあるように、1枚のカードが空いた場所を埋めるために、分配されていない36枚のカードから偶然に引かれる。

 象徴カードが、展開された42枚の中にある時は、その象徴カードを取り出して、前と同じように、最初の並びの右に、ちょっと離して置いておきます。
 そして、まだ展開されていない残りの36枚のカードの中から適当な方法(意図的に選ぶのではない)で1枚選んで、それで空いた場所を埋めるということです。
 これは、カードの絵が見えないように裏返しにして、普通にシャッフルし、そこから適当な1枚を質問者もしくは占い作業者が選べばいいと思われます。

The cards are then read in succession, from right to left throughout, beginning at card No. 1 of the top line, the last to be read being that on the extreme left, or No. 7, of the bottom line.
それから、カードは、右から左へと全体にわたって連続して読解される。最上列の1番カードで始まり、左の末端、すなわち最下列の7番カードにある存在が読解されるところで終了する。

 第1列(1st line)の右上の1番から左上の7番、次に第2列(2nd line)の1番から7番、という順で、最後は第6列(6th line)の1番から7番の順番で、読んでいくということです。
 ただし、これが時系列なのか、全体的なものを見ていくのかは、明記されていません。

This method is recommended when no definite question is asked-that is, when the Querent wishes to learn generally concerning the course of his life and destiny.
この方法は、限定的な質問が問われない時に推奨される。すなわち、質問者が、彼の人生と運命の進路について幅広く知りたい望むときである。

 ある特定の問題を見るのではなく、総合的に人生を見たいという場合には、参考になる展開方法だということです。

If he wishes to know what may befall within a certain time, this time should be clearly specified before the cards are shuffled.
もし彼(質問者)が、ある時点以内に起こるかもしれない何かを知りたいのであれば、カードがシャッフルされる前に、その時点は明確に指定されるべきである。

 何か条件を限定する場合は、占いを始める前に、質問者に聞いておくということです。

With further reference to the reading, it should be remembered that the cards must be interpreted relatively to the subject, which means that all official and conventional meanings of the cards may and should be adapted to harmonize with the conditions of this particular case in question--the position, time of life and sex of the Querent, or person for whom the consultation is made.
読解についての更なる言及については、カードは論題に関連して解釈しなければならないことを覚えているべきである。それは、カードのすべての公式および従来の意味が、質問にあるこの具体的な問題の状態、…すなわち質問者または相談の対象者の立場と年齢と性別…と調和するために適合させてもいいし、するべきである。

 ウェイト氏の、占いについてのアドバイスです。
 カードのリーディングは、状況に応じて柔軟に行ってください、という当たり前のことです。
 あまりにカードの意味からかけ離れた占いになるのは問題ですが、ある程度までは現実の状況に合わせて修正するのがいいです。

Thus, the Fool may indicate the whole range of mental phases between mere excitement and madness, but the particular phase in each divination must be judged by considering the general trend of the cards, and in this naturally the intuitive faculty plays an important part.
たとえば、「愚者」は、単なる興奮と狂気の間の精神的な様相の全ての範囲を示すかもしれないが、各々の占いにおける特定の様相は、カードの一般的な傾向を考慮することによって判断しなければならない。そしてもちろん、この(カード解釈)中には、直感的な能力は重要な役割を果たす。

 カードには、色々な意味と色々な状態が混ざり合って存在しているので、相談された問題に対して、どのような意味なのか、どのような状態なのかを、一般的傾向と直感的な閃きで、判断していかなければならないということですよね。
 まあ、こういうのも、当たり前のことですけど。

It is well, at the beginning of a reading, to run through the cards quickly, so that the mind may receive a general impression of the subject--the trend of the destiny--and afterwards to start again--reading them one by one and interpreting in detail.
読解の最初に、心が論題の全体的な印象…つまり運命の傾向…を受け取ることができるように、手早くカードに一通り目を通しておき、…そしてその後に、再び最初から…それら(カード)を一つずつ読解していって、詳細に解釈することは、良いことである。

 まず最初にカードをざっと読んで、運命の全体的なあらすじを読み取っておいて、その後に1枚ずつ詳しく見ていくということですね。
 初心者は、1枚ずつしか見れないので、物語全体としてのストーリーが破綻してしまうことがあります。そうならないためにも、まず最初に全体的に見渡して、運命の物語の全体的な展開をつかんでおくことが大事です。

It should be remembered that the Trumps represent more powerful and compelling forces--by the Tarot hypothesis--than are referable to the small cards.
「大アルカナ」は、…「タロット」の仮説により…小アルカナに属するといえるものよりも、より強力で無視できない力を象徴するということを覚えておくべきである。

 大アルカナは、小アルカナよりも上位の存在、つまり神に近い存在であるというのが、タロットデザイン上の暗黙的な前提条件となっていますので、これも当然です。
 中には、「大アルカナも小アルカナも平等である」という平等主義者もいるかと思いますが、そうであれば「神も人間も平等である」ということになり、「よって、私が神である」という妙な結論に至りそうなので、そういうのは勘弁してください。

The value of intuitive and clairvoyant faculties is of course assumed in divination.
直観と千里眼の能力の価値は、占いにおいて、当然のことながら想定されている。

 占いをする上では、直観と千里眼の能力は必要不可欠ということですね。
 理屈や偶然だけで占いが出来るのであれば、コンピュータなどで機械的に結論が出せるのですが、多数のカードを展開するカード占いでは、どうしても理屈を超えた能力が必要とされます。
 もし、そういう能力が欠如している人は、残念ながら、カード占いには向いていないということになります。

Where these are naturally present or have been developed by the Diviner, the fortuitous arrangement of cards forms a link between his mind and the atmosphere of the subject of divination, and then the rest is simple.
これら(直観と千里眼の能力)が、生まれつき存在しているか、または占者により開発されている場合には、カードの偶然の配置は、彼の心と占いの論題の雰囲気との間に連結を形成する。その後は、残りは簡単である。

 「link/連結」は、日本でも普通に「リンク」と呼ばれていますが、占いにおいては、様々なリンクの能力が必要とされます。
 神とのリンク、カードとのリンク、質問者とのリンク、そして自分自身へのリンクです。
 占いにおいては、自己の精神を、媒体、媒介者、もしくは伝令者という立場に置くことが重要なのです。
 そして、一旦リンクが完成してしまえば、後は簡単なことで、感じたことを言葉に変換していけばいいわけです。

Where intuition fails, or is absent, concentration, intellectual observation and deduction must be used to the fullest extent to obtain a satisfactory result.
直観力が不足しているか欠けている場合には、満足できる結果を得るためには、集中と、理知的な観察と推論とを、最大限に使用しなければならない。

 神の領域にある直観が使えない場合は、精神的領域にある理性でカバーしようということですね。
 これでもカバーできない場合は、物理的とか金銭的にカバーすることになるのかも・・・・。

But intuition, even if apparently dormant, may be cultivated by practice in these divinatory processes.
しかし、直観は、見かけ上眠っていたとしても、これらの占いの過程での練習により養成されるかもしれない。

 最初はうまく直観が使えなくても、練習していけば上達するかもしれないよ、ということですよね。

If in doubt as to the exact meaning of a card in a particular connexion, the Diviner is recommended, by those who are versed in the matter, to place his hand on it, try to refrain from thinking of what it ought to be, and note the impressions that arise in his mind.
もし、ある特定の関係におけるカードの正確な意味に関して疑わしい場合、占者は、彼の手をその(カードの)上に置き、それがそうあるべきであると考えるのを控え、彼の心に生まれる印象に注目することを、その問題に関して精通している者より推奨されている。

 「those who are versed in the matter/その問題に関して精通している者」というのは、カード占いの熟練者のことですので、ここはウェイト氏の考えではなく、その人から聞いた、占いにおける助言ということですね。
 カードの表面的な意味を知っていても、なかなか本来の状況にピッタリと当てはまりそうにない時って、あります。
 そんな時は、自らの思考や先入観や常識などに頼ることをやめて、改めて心を空っぽにして、心の奥から神託を引き出すということです。

At the beginning this will probably resolve itself into mere guessing and may prove incorrect, but it becomes possible with practice to distinguish between a guess of the conscious mind and an impression arising from the mind which is sub-conscious.
最初は、これは、おそらくは単なる憶測と化したり、間違いであると判明するかもしれないが、意識的な心の推測と、潜在意識である心から生じる印象を区別すことは、練習により可能となる。

 初めから、神託を受けることができるわけではなく、練習して経験を積みながら、そういう能力を磨いていかなければならないということです。
 そして、意識的な心の推測というのは、ここでは否定されているわけではありませんが、それはあくまでも「神託による運命」ではなく、単なる「占い師の個人的経験や判断」ということを、心に留めておくべきですね。

It is not within my province to offer either theoretical or practical suggestions on this subject, in which I have no part, but the following additamenta have been contributed by one who has more titles to speak than all the cartomancists of Europe, if they could shuffle with a single pair of hands and divine with one tongue.
この話題に対しては、理論的にも実践的にも提案を提供することは、私の領域の範囲外であり、それは、私の役割ではない。ではあるが、1組の手でシャッフルし、1つの舌で占うことができる、すべてのヨーロッパのカード占い師よりも話す資格を持つ人より、以下の「付加事項」が寄稿されている。

 なんか遠回し的な言い方ですよね。
 いつもは、自己主張が強い文を書くウェイト氏ではありますが、自分はあくまでも神秘主義の研究がメインであり、占いの世界とはなるべく距離を置いておきたいということなのでしょう。

 それにしても、ちょっと皮肉っぽい書き方ではありますよね。
 当時も、3本目の手を使ってシャッフル(イカサマ)し、2枚目の舌(でまかせ)で喋る占い師が、数多くいたということなのでしょうかね。
 そして、2本の手と1枚の舌を使う普通の占い師のレベルも割と低くて、あまり参考にはならなかったのでしょう。
 でも、そういう普通の占い師の中に、ある程度はウェイト氏が信頼していた人がいたようで、以下の文は、その人が言っていることのようです。

NOTES ON THE PRACTICE OF DIVINATION
占いの実践に関する注記
1. Before beginning the operation, formulate your question definitely, and repeat it aloud.
1. 作業を開始する前に、明確に質問を定式化し、声を出してそれを復唱しなさい。

 質問があいまいなものであれば、きちんとわかるように明確化しておき、復唱することで再確認しなさいということです。

2. Make your mind as blank as possible while shuffling the cards.
2. カードをシャッフルしている間、あなたの心をできるだけ空っぽにしなさい。

 カード占いは神託ですので、余計な雑念を持ったり、こうなりたいとかいう意識的な働きかけをするべきではありません。

3. Put out of the mind personal bias and preconceived ideas as far as possible, or your judgment will be tinctured thereby.
3. 心から、個人的偏見と先入観をできる限り追い出しなさい。さもないと、それによりあなたの判断は色を帯びるだろう。

 占い師といえども人間ですので、なかなかこういうのは難しいのですが、見た目や常識や過去の経験は、なるべく除外しておいた方がいいよということですね。

4. On this account it is more easy to divine correctly for a stranger than for yourself or a friend.
4. この理由により、自分自身や友人よりも、見知らぬ人のために正しく占う方が簡単である。

 自分自身や友達などの身内の人に対してだと、悪いことは言いたくない、知りたくないという、心のバイアスがありますからね〜。
 利害関係の無い、赤の他人の方が、客観的に観察できるしアドバイスも出来るということです。


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