ライダーウェイト・タロット解説

Bibliography
参考文献目録

A CONCISE BIBLIOGRAPHY OF THE CHIEF WORKS DEALING WITH THE TAROT AND ITS CONNEXIONS
タロットとそれに関連するものを扱った主要な著作の簡潔な参考文献目録


 なぜか気合いの入った、参考文献目録です。
 ウェイト氏の辛辣な書評が、色々と面白いです。(笑)
 Part1§4には、これらの過去の文献と歴史に関しての、色々な話が出ていますので、併せて読んでみてください。

 なお、以降にある本の紹介で、本のサイズの名称が出てきます。
 一般的な本は、決められた大判サイズの印刷用紙に、複数ページをまとめて印刷して、それを折って綴じて裁断して、一冊の本にします。
 つまり、本のサイズというのは、元の印刷用紙のサイズと、紙を折る回数で、大体決まっていたこともあり、それにちなんだ名前で呼ばれています。
 とりあえず、以下に出てくる本のサイズを、ここでまとめて掲載しておきます。

本サイズ一覧
呼び名 折り数 概略寸法(縦×横, mm) JIS同等
Royal 4to
(Royal quarto)
4 320×250 B4
4to
(quarto)
4 290×230 A4
8vo
(octavo)
8 230×150 A5
demy 8vo
(demy octavo)
8 220×140 A5
Cr. 8vo
(Crown octavo )
8 190×130 B6
Fcap. 8vo
(Foolscap octavo)
8 170×110 B6
Sq. 8vo
(Square octavo)
8 190×140 B6
Sq. 12mo
(Square duodecimo)
12 140×110 A6
Sq. 16mo
(Square sextodecimo)
16 110×90 B7

 前置きはこれくらいにして、とりあえず本編へ。

As in spite of its modest pretensions, this monograph is, so far as I am aware, the first attempt to provide in English a complete synoptic account of the Tarot, with its archaeological position defined, its available symbolism developed, and--as a matter of curiosity in occultism--with its divinatory meanings and modes of operation sufficiently exhibited, it is my wish, from the literate standpoint, to enumerate those text-books of the subject, and the most important incidental references thereto, which have come under my notice.
その控え目な自負にもかかわらず、このモノグラフ(研究論文)は、私の知る限りにあいては、明示された考古学的な立場と、発展した利用可能な象徴主義と共に、英語によるタロットの完全で要約的な説明を提供する最初の試みであり、そして、…神秘主義における好奇心の問題として…その占いの作業方法が十分に示されており、学問上の観点から、主題(タロット)に関するそれらの教科書を列挙し、私の目についたもので、最も重要な付帯的な言及をそこへ行うのが、私の願望である。

 「As in spite of its modest pretensions/その控え目な自負にもかかわらず」というのは、「うぬぼれで言うわけではないんだけれども…」という感じの、少し謙虚さを見せるための表現です。もちろん、ウェイト氏は、相当の自負があり、うぬぼれ屋さんでもありますので、単なる前置きの文です。(笑)

 「monograph/モノグラフ」というのは、ある特定分野の研究をまとめた論文のことで、ここではタロットについて述べた研究論文であるということを意味します。
 質・量ともに、モノグラフと呼んでも差し支えない程度には仕上がっていますが、あくまでも表向きには、占い初心者のためのタロット占いの本、なんですけど、どう見ても、初心者向けでは無い内容になってしまっています。(笑)
 結局のところ、ウェイト氏は今までのタロットの扱われ方が気に入らず、もっと専門的に研究して成果を発表し、色々と自慢したかったということだと思います。
 でも、こういう物事に熱中できる人は研究者に向くタイプですし、ウェイト氏は神秘主義の研究者としては、当時もなかなかの権威者だったようですね。

 ちなみに「in English/英語による」とあるのは、パピュス氏の『ボヘミアンのタロット』がフランス語で1889年発行ですので、それを意識しているようです。

 なお、占いについては「as a matter of curiosity in occultism/神秘主義における好奇心の問題として」というように曖昧な立場で言及していますが、これはウェイト=神秘主義作家というブランドとグランド・オリエント=占い作家というブランドの立場の違いもありますので、商売上、なかなか難しいところですね。
 ただし、ウェイト氏は世俗的な占いは嫌いなのは確かですので、ちょっとした嫌みの言葉なのかもしれませんね。

The bibliographical particulars that follow lay no claim to completeness, as I have cited nothing that I have not seen with my own eyes; but I can understand that most of my readers will be surprised at the extent of the literature--if I may so term it conventionally--which has grown up in the course of the last 120 years.
以下の参考文献目録の明細は、私自身の目で見たことのないものは引用していないので、完全性を主張しない。しかし、私は、私の読者の大部分が、ここ120年の間に成長してきた…もし私がそれを慣習的にそう呼ぶならば…文芸作品の広がりに驚くであろうことが推測する。

 ウェイト氏が読んだことのある範囲の文献を列挙しているので、これがタロットに関する本の全てであるということではない、ということです。
 今までのタロットの文献を「literature/文芸作品」と呼んでいるのは、おそらく小説や物語みたいなフィクションであり、登場する人物や歴史はすべて架空のものです、と言いたいのだと思います。
 つまり、この本書こそが、最初のノンフィクションのタロット本だと言いたいわけですかね。

Those who desire to pursue their inquiries further will find ample materials herein, though it is not a course which I am seeking to commend especially, as I deem that enough has been said upon the Tarot in this place to stand for all that has preceded it.
さらに深くそれらの研究を進めることを望む者は、この中に十分な材料を見つけるだろう。とはいえ、それに先行したもの全てを表すために、この場所にタロットについて充分に述べたと考えているので、私が特に推奨しようとしている方向では無いのではあるが。

 つまり、過去の文献の重要な箇所については、ほとんどが本書の中で考察されているので、今さら過去の文献を辿って調べたとしても、あまり得るものは無いので、オレ様の書いたこの本をしっかり読んで理解する方がいいよ、と言いたいわけです。

The bibliography itself is representative after a similar manner.
参考文献目録自体は、同様の方法に従って表現している。

 通し番号、本のタイトル、著者、本のサイズ、発行地、発行年、そしてウェイト氏の書評という感じで、各々記述されています。

I should add that there is a considerable catalogue of cards and works on card-playing in the British Museum, but I have not had occasion to consult it to any extent for the purposes of the present list.
大英博物館にある、カードとカード遊戯の著作のうち重要な目録を付け加えるべきであるが、私は、現在の目録の目的のために、どの程度までそれを考慮するかという時を持っていない。

 他の仕事で忙しいのか、博物館に立ち入り禁止になったのかはわかりませんが、大英博物館にある収集品のリストを、この参考文献目録に付加することは無く、ウェイト氏が所有していて、割と一般的な書籍が、この参考文献目録に掲載されているようです。
 まあ、博物館にしかないコレクションを参考文献にされても、一般の人は見ることは出来ないですからね。

 とはいえ、そのおかげで、参考文献として重要なものが抜け落ちてしまっていますけどね。(ソラ・ブスカのタロットとか)

I

Monde Primitif, analyse et compare avec le Monde Moderne. Par M. Court de Gebelin. Vol. 8, 4to, Paris, 1781.
『原始の世界、現代社会との比較と分析』。クール・ド・ジェブラン氏著。第8巻、四折判(A4相当)、パリ、1781年発行。
The articles on the Jeu des Tarots will be found at pp. 365 to 410.
「タロット遊戯」に関する記事は、365ページから410ページで見つけられるだろう。

 この『原始の世界』の第8巻の365〜410ページに、今回紹介したタロットについての記事が「タロット遊戯」というタイトルで掲載されています。

The plates at the end shew the Trumps Major and the Aces of each suit.
巻末の図版には、大アルカナと各スートのエースが掲載されている。

 凹版印刷されたタロットカードの挿絵のページは、本文の活版印刷とは別刷りにされて、巻末にまとめて掲載されています。

These are valuable, as indications of the cards at the close of the eighteenth century.
これらは、18世紀末のカードの指標として有益である。

 この頃は、南フランスで次々とマルセイユ版が作られてきていた時期ですので、このカードの挿絵は、歴史的に見ても有益な情報になるということですね。

They were presumably then in circulation in the South of France, as it is said that at the period in question they were practically unknown at Paris.
それらがパリで事実上知られていなかった問題の期間であったと言われていた時には、それらはおそらく、その時にはフランスの南部で流通していた。

 フランス南部では、タロットはかなり有名なゲームだったようですので、フランス北部のパリに住んでいたジェブラン氏は、それを知らなかったということです。
 でも、他の若い人たちは、もっと前に噂を聞いて、遊んでいたのかもしれませんよね。

I have dealt with the claims of the papers in the body of the present work.
私は、本書の本文中で、論文の主張を扱っている。

 この本のPart1§4で、タロットに関するジェブラン氏のエジプト起源説の主張については、根も葉もないことであると、断じている部分です。

Their speculations were tolerable enough for their mazy period; but that they are suffered still, and accepted indeed without question, by French occult writers is the most convincing testimony that one can need to the qualifications of the latter for dealing with any question of historical research.
それらの迷路のような期間では、それらの推測は十分許されるものであった。しかし、それらがフランス人のオカルト作家達により、まだ黙認されたままで、疑いもなく本当に受け入れられているということは、歴史的な研究のどんな質問にも対処するための現在の資格を必要とする最も説得力がある証明である。

 「French occult writers/フランス人のオカルト作家達」というのは、おそらくレヴィ氏やパピュス氏を中心とするエジプト系タロットの愛好者たちのことだと思います。
 歴史的な問題を取り扱うには、盲目的な態度ではダメで、歴史上の正しい最新の知識と評価眼が必要であるということですよね。

 それにしても、ウェイト氏って、なんか説教臭くて、ちょっと面倒なオヤジだなと思います。(笑)

II

The Works of Etteilla. Les Septs Nuances de l'euvre philosophique Hermitique; Maniere de se recreer avec le Jeu de Cartes, nommees Tarots; Fragments sur les Hautes Sciences; Philosophie des Hautes Sciences; Jeu des Tarots, ou le Livre de Thoth; Lecons Theoriques et Pratiques du Livre de Thoth--all published between 1783 and 1787.
エッティラの著作。『ヘルメス哲学の7つの色合い』、『タロットと呼ばれるカードで遊ぶ方法』、『高等科学に関する断片』、『高等科学の哲学』、『タロットの遊戯、またはトートの書』、『トートの書の理論的と実践的な授業』。全て1783年と1787年の間に発行。

 エッティラ氏の著作を、手抜きして一括で紹介していますね。
 ウェイト氏は、エッティラ氏の本については、ほとんど評価していないということでもあります。

 「Les Septs Nuances de l'euvre philosophique Hermitique/ヘルメス哲学の7つの色合い」は、1786年の発行。
 「Maniere de se recreer avec le Jeu de Cartes, nommees Tarots/タロットと呼ばれるカードで遊ぶ方法」は、1785年の発行であり、タロット占いについてのエッティラの最初の本です。
 「Fragments sur les Hautes Sciences/高等科学に関する断片」は、1785年の発行。
 「Philosophie des Hautes Sciences/高等科学の哲学」は、1785年の発行。
 「Jeu des Tarots, ou le Livre de Thoth/タロットの遊戯、またはトートの書」は、1788年発行。
 「Lecons Theoriques et Pratiques du Livre de Thoth/トートの書の理論的と実践的な授業」は、1790年の発行です。

 いずれも、フランス語の本ですので、内容は良くわかりませんが、色々と妄想が入り交じっているような感じです。

These are exceedingly rare and were frankly among the works of colportage of their particular period.
これらは、非常にすばらしく、率直に言うと、それらの特定の期間の「書籍行商」の作品の間にあった。

 「rare/すばらしく」というのは、「rare/生焼け」の意味を持たせているようで、ちょっと嫌みな感じです。
 「colportage/書籍行商」の作品というのは、一般大衆向けの安易な本ということです。
 1783年から1790年にかけて、エッティラは、ジェブラン氏の説をベースにして、さらに根も葉もない自説を展開し、タロットの古代エジプト起源説を積極的に流行させていったということです。

They contain the most curious fragments on matters within and without the main issue, lucubrations on genii, magic, astrology, talismans, dreams, etc.
それらは、本題(タロット)の範囲内と、守護神(悪霊)、魔法、占星術、護符、夢などに関する文学作品の本題(タロット)の範囲を超えた事柄についての、きわめて不思議な断片を含んでいる。

 エッティラ氏は、カード占いがメインでしたが、タロットやカードに関するネタだけでなく、タロット以外のオカルト分野にも、積極的に事業展開していったということですよね。

I have spoken sufficiently in the text of the author's views on the Tarot and his place in its modern history.
私は、現代の歴史の中でのタロットと彼の位置に関して、著者の見解の本文の中で十分に述べた。

 これも、Part1§4で述べられています。

He regarded it as a work of speaking hieroglyphics, but to translate it was not easy.
彼は、それを話をする象形文字の作品と見なしていたが、それを翻訳することは、簡単ではなかった。

 「それ」というのは、おそらくタロットのことです。
 つまり、タロットは古代エジプトの象形文字の一種であり、それを展開することで、様々な話ができるということのようです。
 しかしながら、当時はまだ、古代エジプトの象形文字は解読されていませんでしたので、誰も翻訳することは出来ませんでした。

He, however, accomplished the task that is to say, in his own opinion.
しかしながら、彼は、すなわち、彼自身の意見で仕事を達成した。

 要するに、当時は誰も読めなかった象形文字を、エッティラは自分勝手なデッチ上げの解釈で読んだということです。
 まあ、見えないものか見えたり、聞こえないものが聞こえたり、読めない文字が読めたりするのは、オカルトの世界は普通にあることですので、特に驚くことではありませんが。(苦笑)

III

An Inquiry into the Antient Greek Game, supposed to have been invented by Palamedes. [By James Christie.] London: 4to, 1801.
『パラメデスにより発明されたと考えられていた古代ギリシャのゲームの調査』。ジェームズ・クリスティ著。ロンドン、四折判(A4相当)、1801年発行。

 「Palamedes/パラメデス」は、ギリシァ神話に出てくる人物で、碁に似たPetteiaというゲームを作ったという伝説があります。

I mention this collection of curious dissertations because it has been cited by writers on the Tarot.
それがタロットの作家により引用されていたので、私はこの好奇心をそそる論文の収蔵品に言及しておく。

 誰が引用していたかは、わかりませんでした。

It seeks to establish a close connexion between early games of antiquity and modern chess.
それは、古代の初期のゲームと近代的なチェスとの間の親密な関係を確証しようとする。

 ゲーム自体は、あんまり似ているという感じは無いんですけどね。

It is suggested that the invention attributed to Palamedes, prior to the Siege of Troy, was known in China from a more remote period of antiquity.
トロイ戦争より前に、パラメデスによる発明は、古代からずっと離れた中国で、知られていたことが提議されている。

 トロイ戦争自体は神話的なものですが、このゲーム自体はかなり昔から古代ギリシャで行われていたという記録があります。
 そして、中国の碁も、かなり古くから行われていたということが知られています。
 似たようなゲームが、遠く離れた場所で行われていたというのは、興味深い事実ではあります。

The work has no reference to cards of any kind whatsoever.
著書には、いずれにしても、どんな種類のカードにも言及していない。

 ゲームに関する本なので、カードには全く関係ない話だったということです。

IV

Researches into the History of Playing Cards. By Samuel Weller Singer. 4to, London, 1816.
『遊技カードの歴史についての研究』。サミュエル・ウェラー・シンガー著。四折判(A4相当)、ロンドン、1816年発行。
The Tarot is probably of Eastern origin and high antiquity, but the rest of Court de Gebelin's theory is vague and unfounded.
タロットはおそらく東洋起源で、ずっと古代のものであるが、クール・ド・ジェブランの理論の支えは、漠然として根拠の無いものである。

 ということを、著者は述べています。
 著者は、タロットはヨーロッパで生まれたものではなく、東洋、おそらく古代エジプトを起源としているが、ジェブラン氏の根拠については、まだ明確ではないという主張ですね。

 なお、現代では、タロットはイタリアが起源で、トランプカードはアジアが起源と考えられています。

Cards were known in Europe prior to the appearance of the Egyptians.
カードはエジプト人(ジプシー)の出現の前にヨーロッパで知られていた。
The work has a good deal of curious information and the appendices are valuable, but the Tarot occupies comparatively little of the text and the period is too early for a tangible criticism of its claims.
著作には、多くの好奇心をそそる情報があり、付録は有益であるが、タロットは本文の比較的少ししか占めていないし、(タロットの存在した)時期は、その主張の現実的な批評としては早過ぎる。

 まあ、タロットが、古代エジプトの時代から存在していたという著者の主張には、何の実質的な根拠は無いということです。

There are excellent reproductions of early specimen designs.
初期の(カードの)見本の図案の素晴らしい復刻がある。

 この本には、色々なカードの復刻が、巻末付録として掲載されています。

Those of Court de Gebelin are also given in extenso.
また、クール・ド・ジェブランのそれら(タロットの図案)もまた、詳細に挙げられている。

V

Facts and Speculations on Playing Cards. By W. A. Chatto. 8vo, London, 1848.
『遊技カードの起源と歴史の事実と憶測』。W. A. チャット著。八折判(A5相当)、ロンドン、1848年発行。
The author suggested that the Trumps Major and the numeral cards were once separate, but were afterwards combined.
著者は、大アルカナと数札は、昔は別々であったが、その後に組み合わされたことを提案した。

 この主張については、ウェイト氏は同意しているようです。

The oldest specimens of Tarot cards are not later than 1440.
タロットカードの最も古い標本は、1440年より後ではない。

 著者は、遅くとも、1440年頃までには、タロットは作られていたという証拠を提示しています。
 これについても、ウェイト氏は同意しているようです。

But the claims and value of the volume have been sufficiently described in the text.
しかし、本の主張と価値は、本文の中で十分に説明されている。

 これも、Part1§4で、少しだけ述べられていますが、上記の主張以外は、ネタとしてはイマイチであるという評価です。 

VI

Les Cartes a Jouer et la Cartomancie. Par D. R. P. Boiteau d'Ambly. 4to, Paris, 1854.
『カード遊戯とカード占い』。D. R. P. ボワトー・ダムブリー著。四折判(A4相当)、パリ、1854年発行。
There are some interesting illustrations of early Tarot cards, which are said to be of Oriental origin; but they are not referred to Egypt.
初期のタロットカードのいくつかの興味深い挿絵があり、それ(タロット)は東洋の起源であると言われている。しかし、それらはエジプトのことを指していない。

 ということを著者は述べています。
 そして、エジプトは「Orient/東洋」に含まれますが、この著者は、エジプト以外の東洋の地方が起源であると言っているわけですね。

The early gipsy connexion is affirmed, but there is no evidence produced.
初期のジプシーとの関係は確言されているが、提出された証拠は全く無い。

 証拠が無いのに、「オレの言っていることは本当だから信じてくれ!」という感じですかね。

The cards came with the gipsies from India, where they were designed to shew forth the intentions of "the unknown divinity" rather than to be the servants of profane amusement.
カードはジプシーと共にインドから来た。そこで、それら(タロット)は、世俗的な娯楽に役立つ物であるというよりむしろ、「未知の神性」の意図を見えるように示すように設計された。

 これも著者の主張ですね。
 ジプシーは、インド北部が発祥であることが、現在では知られています。
 そして、見えざる存在を、見えるようにするためのツールとして、タロットがデザインされているということです。

VII

Dogme et Rituel de la Haute Magie. Par E'liphas Le'vi, 2 vols., demy 8vo, Paris, 1854.
『高等魔術の教理と祭儀』。エリファス・レヴィ著、2巻、デマイ八折判(A5相当)、パリ、1854年発行。
This is the first publication of Alphonse Louis Constant on occult philosophy, and it is also his magnum opus.
これは神秘哲学に関するアルフォンス・ルイ・コンスタンの最初の出版物であり、それはまた彼の代表作でもある。

 いきなり魔術界に現れたビッグスターといった感じの登場ですが、実際にこの本が評価されたのは、もっと後になってからです。
 当時は、まだまだ無名のオカルト作家で、公私ともに苦労の多い人でした。

 なお、アルフォンス・ルイ・コンスタンというのは、エリファス・レヴィ氏の本名で、オカルト関係以外の本は、この本名の名義で以前にいくつか発行しています。まあ、あまり売れてはいなかったみたいですけど。

 ちなみに、この本はウェイト氏により英訳されて、「Transcendental Magic, its Doctrine and Ritual/超越的魔術、その教理と祭儀」というタイトルで1896年に発行されて、そこそこ売れているようです。
 また、日本訳も、『高等魔術の教理と祭儀』というタイトルで1992年に発行されています。

 ウェイト氏は、レヴィ氏に対しては割と低評価なのですが、それなりに注目しているのは確かです。

It is constructed in both volumes on the major Keys of the Tarot and has been therefore understood as a kind of development of their implicits, in the way that these were presented to the mind of the author.
それは、両方の巻の中で、タロットの主要な鍵(大アルカナ)の上に組み立てられており、それゆえに、著者の心に提示された方法で、それら(タロット)の暗黙的な進化の一種として理解されていた。

 「both volumes/両方の巻」というのは、この本が「Dogme/理論巻」と「Rituel/祭儀巻」の2巻で構成されているので、その両方にわたって解説されていることを示しています。

To supplement what has been said of this work in the text of the present monograph, I need only add that the section on transmutations in the second volume contains what is termed the Key of Thoth.
本書のモノグラフの本文におけるこの著作について述べられていることを補うために、私は、第2巻にある「変化」の項が、トートの鍵と呼ばれることを含むということを、言い足す必要があるだけである。

 「the text of the present monograph/本書のモノグラフの本文」は、この本のPart1§4のことです。
 第2巻は、「Rituel/祭儀巻」のことで、この14項「変化」にある挿絵が、「Key of Thoth/トートの鍵」と呼ばれているものです。


クリックで拡大

『高等魔術の教理と祭儀』より「トートの鍵」

The inner circle depicts a triple Tau, with a hexagram where the bases join, and beneath is the Ace of Cups.
内部の円には、基部が結合したところにある六芒星形と共に三つのタウ十字を描いており、下の方には、杯のエースがある。

 見たままの説明です。

Within the external circle are the letters TARO, and about this figure as a whole are grouped the symbols of the Four Living Creatures, the Ace of Wands, Ace of Swords, the letter Shin, and a magician's candle, which is identical, according to Le'vi, with the lights used in the Goetic Circle of Black Evocations and Pacts.
外部の円の中には、TAROの文字があり、この図に関して全体で分類される、4つの生き物の象徴、棒のエース、剣のエース、(ヘブライ)文字のシン、および魔術師の蝋燭(ろうそく)を寄せ集めており、それ(魔術師の蝋燭)は、レヴィによると、黒魔術の召喚と契約の魔術円で使用される灯火と同一である。

 「four Living Creatures/4つの生き物」は、エゼキエル書に出てくる、人間、獅子、牛、鷲の4つの生物だと思われますが、記号化されすぎてて、どれがどれなのかは、よくわからないですね。
 予想では、人間が右上、右下が獅子、左下が牛、左上が鷲ですかね。
 そして、「棒のエース」は右、剣のエースは左、ヘブライ文字のシン()は上、魔術師の蝋燭は下にあります。
 ちなみに、ヘブライ文字のシンは、レヴィ説では「0:愚者」に対応しています。

「Goetic Circle of Black Evocations and Pacts/黒魔術の召喚と契約の魔術円」の図は、第2巻15項「妖術師の魔宴」の挿絵のことではないかと思われます。


クリックで拡大

『高等魔術の教理と祭儀』より「黒魔術で用いられる招魂円陣」

 ちなみに、この魔術師の蝋燭は、「三日月形に彫んだ黒い木製燭台の上に立てた人間の脂肪でつくった蝋燭」だそうです。
 この蝋燭を作ってみたい人は、脂肪吸引手術をした友達から、材料を提供してもらってください。(笑)

The triple Tau may be taken to represent the Ace of Pentacles.
三つのタウ十字は、五芒貨のエースを表現するために描かれたのかもしれない。

 この図には五芒貨が欠けていますので、この円自体が、五芒貨を象徴しているような感じですよね。

The only Tarot card given in the volumes is the Chariot, which is drawn by two sphinxes; the fashion thus set has been followed in later days.
本の中に描写された唯一のタロットカードは、戦車であり、それは2頭のスフィンクスによって牽引されている。このように設定された流行は、後の時代においても続いている。

 この『高等魔術の教理と祭儀』の中には、タロットの挿絵としては「戦車」のみ掲載されています。
 レヴィ氏は、文章だけでなく、絵の腕もなかなかのものです。
 そして、ウェイト氏も、この流行のスタイルを採用していますよね。


クリックで拡大

『高等魔術の教理と祭儀』より「戦車」

Those who interpret the work as a kind of commentary on the Trumps Major are the conventional occult students and those who follow them will have only the pains of fools.
大アルカナの論評の一種として著作を解釈する人は、慣習的なオカルト研究家であり、そして、彼らに従う者は、愚者の苦しみのみを得るであろう。

 当時の魔術界は、レヴィ氏やその流れにあるパピュス氏を継承したものであり、ゴールデン・ドーンでもタロットのエジプト起源説は根強い人気がありました。
 つまり、ウェイト氏は、そういうものを完全に否定し、オレ様の意見の方が正しいと言っているわけです。
 まあ、完全に周囲を敵に回していますよね。(苦笑)

VIII

Les Romes. Par J. A. Vaillant. Demy 8vo, Paris, 1857.
『ロマ』。J. A. ヴァイヤン著。デマイ八折判(A5相当)、パリ、1857年発行。

 ここでの本のタイトルは少々省略されており、正式には、「Les Romes: Histoire Vraie Des Vrais Bohemiens/ロマ:真のボヘミアンの歴史の真実」です。
 「Romes/ロマ」というのは、彼らの祖先がインド北部のロマニ地方であることに由来した民族ということであり、彼らは英語圏では「Gypsy/ジプシー」、フランス圏では「Bohemien/ボヘミアン」と呼ばれています。

The author tells us how he met with the cards, but the account is in a chapter of anecdotes.
著者は、彼がどのようにしてカードに出会ったかを我々に語りますが、その話は逸話の章にある。

 つまり、必ずしも事実に基づくものではなく、虚構が混ざっている可能性が高いということですね。

The Tarot is the sidereal book of Enoch, modelled on the astral wheel of Athor.
タロットはハトホル女神の星の輪を型どった、エノクの星の本である。

 「Athor」は、おそらくエジプト神話に出てくる「Hathor/ハトホル女神」の別名です。
 ハトホル女神は、古くから信仰されていた女神で、色々な属性を持っていて、天空を司ることもあったようです。
 「Enoch/エノク」は、『旧約聖書:創世記』4:17と5:21〜24に出てくる人物で、偽典の『エノク書』は、このエノクの啓示が書かれています。
 まあ、タロットには、トート神とかハトホル女神とかイシス女神とかエノクとか、色々と魔術界での伝説的な大人物が出てきますよね。
 伝説の人物であれば、本人の承諾は必要ありませんので、何とでも書けるわけです。

There is a description of the Trumps Major, which are evidently regarded as an heirloom, brought by the gipsies from Indo-Tartary.
大アルカナについての記述があり、それは明らかに、ジプシーによってインドのタタール地方から持ち込まれた家宝と見なされている。

 この本の中で、大アルカナの一枚一枚について、割と詳しく説明されています。
 あと、「heirloom/家宝」というのは、先祖代々伝えられてきた、伝統的な宝物ということですね。
 著者は、インドのタタール地方が、タロット発祥の地であると言っているわけです。

The publication of Le'vi's Dogme et Rituel must, I think, have impressed Vaillant very much, and although in this, which was the writer's most important work, the anecdote that I have mentioned is practically his only Tarot reference, he seems to have gone much further in a later publication--Clef Magique de la Fiction et du Fait, but I have not been able to see it, nor do I think, from the reports concerning it, that I have sustained a loss.
レヴィ氏の「教理と祭儀」の出版は、ヴァイヤン氏を大いに感動させたに違いないと、私は思っているが、これにもかかわらず、それは作家の最も重要な著作であり、私が言及した逸話は、実際に彼の唯一のタロットの言及であり、彼が後の出版物…「虚構と真実の魔法の鍵」…でさらに先に行ったように思えるが、私はそれを見ることができなかったが、私はそれに関する報告からは、損害を被っているとは考えていない。

 この本は、タロットの歴史書としては役に立ちませんが、ジプシーの歴史書としては良く出来ています。

 『Clef Magique de la Fiction et du Fait/虚構と真実の魔法の鍵』は、ヴァイヤン氏の著作であり、1863年の発行です。
 まあ、どうせ、レヴィ氏の受け売りのどうでもいい内容なので、見ようが見まいが大した影響は無いという考えのようです。
 ウェイト氏は、ジプシー説は否定的ですので、こういう妄想の繰り返しの歴史には、あんまり興味は無いようです。

IX

Histoire de la Magie. Par Eliphas Levi. 8vo, Paris, 1860.
『魔術の歴史』。エリファス・レヴィ著。八折判(A5相当)、パリ、1860年発行。
The references to the Tarot are few in this brilliant work, which will be available shortly in English.
タロットの言及は、この素晴らしい著作の中にはほとんど無いが、それはまもなく英語で利用可能になるだろう。

 この本は、レヴィ氏の魔術書の中では、文芸的には傑作とされています。
 あくまでも、文芸誌であって、考古学的に見れば、怪しいところだらけですけどね。
 タロットの歴史については、ある程度は言及されていますが、あまり役に立つ情報はありません。
 この本はフランス語で、ウェイト氏により英訳されて『History of Magic/魔術の歴史』というタイトルで1913年にロンドンで発行されています。

It gives the 21st Trump Major, commonly called the Universe, or World, under the title of Yinx Pantomorph--a seated figure wearing the crown of Isis.
それは、第21番目の大アルカナ、一般的には宇宙もしくは世界と呼ばれているものに、「あらゆる姿のYINX」--イシス女神の冠を着け座っている人物像…の称号を与えている。

 「YINX」というのは、普遍的存在を象徴しているということらしく、万物の母みたいな存在のようです。
 で、その像の冠からすると、これはハトホル女神なのですが、よくあるようにイシス女神ということになっています。
 そして、これが古代エジプトでは「21:世界」のカードを象徴しているという主張です。


クリックで拡大

『魔術の歴史』より「あらゆる姿のYINX」

This has been reproduced by Papus in Le Tarot Divinatoire.
パピュスは「タロット占い」でこれを再現させていた。

 パピュス氏の『Le Tarot Divinatoire/タロット占い』は1909年の発行です。
 この本の中で、新デザインのエジプト風タロットの挿絵を掲載していますが、その参考となる巻末付録の挿絵の中に、この図が掲載されています。

The author explains that the extant Tarot has come down to us through the Jews, but it passed somehow into the hands of the gipsies, who brought it with them when they first entered France in the early part of the fifteenth century.
著者は、現存しているタロットはユダヤ人を通して私たちに伝来したが、しかしそれは、どういうわけか、ジプシーの手に入ったもので、彼ら(ジプシー)が15世紀の初めにフランスに最初に入ってきた時に、彼らと一緒にそれ(タロット)が持ち込まれたと説明している。

 タロットの起源については、ヴァイヤン氏は北インド説でしたが、レヴィ氏はユダヤ説を採用しています。
 ユダヤ発祥の秘密の書物の秘密が、どういう経路かは分からないがジプシーに漏れてしまい、ヨーロッパに広まっていったという説ですね。
 いずれにしても、歴史的な事実ではなく、単なる伝説的なものです。

The authority here is Vaillant.
ここでの出典元はヴァイヤンである。

 この本の中で、前述のヴァイヤン氏の『ロマ』の著作の主張を、いくつか引用しています。
 でも、レヴィ氏は、あまりヴァイヤン氏に同調しているような感じではないですね。
 レヴィ氏は、ジプシーはあまり好きではないようです。

X

La Clef des Grands Mysteres. Par Eliphas Levi. 8vo, Paris, 1861.
『大いなる神秘の鍵』。エリファス・レヴィ著。八折判(A5相当)、パリ、1861年発行。
The frontispiece to this work represents the absolute Key of the occult sciences, given by William Postel and completed by the writer.
この著作の口絵は、ウィリアム・ポステルによって発表され、著者により完成された、神秘学の絶対鍵を描いている。

 ウィリアム・ポステル氏(Guillaume Postel, 1510-1581)はフランスの学者で、は、ずっと以前に『世界の創世以来、ずっと隠されてきているものを開けることのできる鍵』という万能の鍵についての本を書いていて、その中に記述された鍵をイラスト化したのがこの絵のようです。
 まあ、オカルト文書ですので、何だかよくわからないんですが・・・。


クリックで拡大

『大いなる神秘の鍵』より「神秘学の絶対鍵」

It is reproduced in The Tarot of the Bohemians, and in the preface which I have prefixed thereto, as indeed elsewhere, I have explained that Postel never constructed a hieroglyphical key.
それ(この絵)は、「ボヘミアンのタロット」で再現していて、私がそれの前に置いた序文の中で、実際に他の所で書いたように、私はポステルが象形文字の鍵を決して組み立てなかったことを説明した。

 パピュス氏はこのレヴィ氏の絵が気に入ったようで、『ボヘミアンのタロット』の口絵にも、この絵が描かれています。
 そして、ウェイト氏は、この『ボヘミアンのタロット』の英訳版の序文を執筆しているのですが、その中で、「ポステル氏は、この鍵の絵を描いていない。」ということを述べているということのようです。
 そしておそらく、レヴィ氏のオリジナルな作画のようですね。
 あと、このネタは、ウェイト氏の他の本で既に書かれているということらしいですね。

Eliphas Levi identifies the Tarot as that sacred alphabet which has been variously referred to Enoch, Thoth, Cadmus and Palamedes.
エリファス・レヴィは、タロットは、エノク、トート神、カドモス、およびパラメデスにより色々と参照された神聖なアルファベットとして見なしている。

 「Cadmus/カドモス」は、ギリシャ神話に出てくる人物で、ギリシャにアルファベットを伝えたと言われています。
 「Palamedes/パラメデス」も、ギリシャ神話に出てくる人物で、サイコロなどを発明したと言われています。
 なお、タロットの一枚一枚は、神聖な文字に相当するというのは、割と昔からある考えですね。

It consists of absolute ideas attached to signs and numbers.
それは、記号と番号に付加された絶対的な観念から成る。

 絵だけでなく数字にも重要な意味があるということです。

In respect of the latter, there is an extended commentary on these as far as the number 19, the series being interpreted as the Keys of Occult Theology.
後者(タロットの番号)については、「神秘学体系の鍵」として解釈される系列の19の番号までは、それについての拡張された論評がある。

 ヘブライ文字の最初から19番目までの文字は、この本の中で「神秘学体系の鍵」と呼ばれています。
 そして、その数字についての説明が書かれているということですかね。

The remaining three numerals which complete the Hebrew alphabet are called the Keys of Nature.
ヘブライのアルファベットを完結する残った3つの数字は、「創造主の鍵」と呼ばれている。

 ヘブライ文字は22文字ですので、22 - 19 = 3 というわけです。
 そして、その残った最後の3文字は、「創造主の鍵」と呼ばれているということですね。

The Tarot is said to be the original of chess, as it is also of the Royal Game of Goose.
タロットは、「王室のガチョウのゲーム」と同じように、チェスの起源であると言われている。

 「Royal Game of Goose/王室のガチョウのゲーム」というのは、サイコロを振って、63のマス目を進む「すごろく」に似たゲームです。


クリックで拡大

「王室のガチョウのゲーム」のゲーム盤

This volume contains the author's hypothetical reconstruction of the tenth Trump Major, shewing Egyptian figures on the Wheel of Fortune.
この本には、「運命の輪」の上のエジプトの図案を表す第10番目の大アルカナの、作者の仮説の復元を含む。

 この本には、運命の輪のデザインを、エジプト風にしたものが、挿絵として掲載されています。


クリックで拡大

『大いなる神秘の鍵』より「運命の輪」

XI

L'Homme Rouge des Tuileries. Par P. Christian. Fcap. 8vo, Paris, 1863.
『チュイルリーの赤い男』。P. クリスチャン著。フールスキャップ八折判(A5相当)、パリ、1863年発行。

 この本の著者は、ピエール・クリスチャン(1811-1877, Pierre Christian)となっていますが、これは『L'Histoire de la magie/魔術の歴史』を書いたポール・クリスチャン氏(Paul Christian)と同じ人物です。

The work is exceedingly rare, is much sought and was once highly prized in France; but Dr. Papus has awakened to the fact that it is really of slender value, and the statement might be extended.
著作は、きわめて素晴らしく、とても人気があり、かつてフランスで高い評価を受けた。しかし、パピュス博士は、それが本当は貧弱な価値しかなく、その供述は拡張されたものであるだろうという事実に気づいた。

 オカルティックなネタが満載された文芸本で、当時のオカルト界からは極めて高い評価を得たのですが、パピュス氏の評価は低かったようです。

It is interesting, however, as containing the writer's first reveries on the Tarot.
しかしながら、それは、タロットについての作家の最初の空想を含むものとしては、興味がある。

 独自の占星術理論をタロットとミックスしたようなもので、物語的には面白いようです。
 フランス語なので読めませんが。

He was a follower and imitator of Le'vi.
彼は、レヴィの追随者であり模倣者であった。

 実際に、レヴィ氏に会って、色々と教えてもらったようですが、レヴィだけではなくて色々なネタが混ざっています。

In the present work, he provides a commentary on the Trumps Major and thereafter the designs and meanings of all the Minor Arcana.
この著作の中で、彼は大アルカナに関する論評と、その後にデザインと、そして全ての小アルカナの意味を提供している。

 マルセイユ版に近いデザインのタロットが紹介されています。

There are many and curious astrological attributions.
そこには、多くの奇妙な占星術に帰するものがある。

 カバラと占星術を取り混ぜた、独自解釈の占星術の理論が展開されているようです。

The work does not seem to mention the Tarot by name.
著作は、名前のタロットについて言及するようには思えない。

 ここに描写されているタロットは独自解釈のものであり、従来のタロットとはまた別の何かである、ということですかね。

A later Histoire de la Magie does little more than reproduce and extend the account of the Trumps Major given herein.
後の『魔術の歴史』は、この中に記述された大アルカナの説明を、再現して拡張しているにすぎない。

 後に発行された『L'Histoire de la magie/魔術の歴史』(1870年発行)でも、やはり独自解釈が多いです。

XII

The History of Playing Cards. By E. S. Taylor. Cr. 8vo, London, 1865.
『遊戯カードの歴史』。E. S. テイラー著。クラウン八折判(B6相当)、ロンドン、1865年発行。
This was published posthumously and is practically a translation of Boiteau.
これは、著者の死後に発行されており、実質的にはBoiteauの翻訳本である。

 前に述べたボワトー氏の『Les Cartes a` Jouer et la Cartomancie./カード遊戯とカード占い』(1854年発行、フランス語)の英訳版みたいなものです。
 著者(翻訳者)が関知しないところで、編集・出版者が翻訳版であることを明記せずに出版したという経緯なんですかね。

It therefore calls for little remark on my part.
したがって、それは、私の方には、ほとんど注目を必要としない。

 既にフランス語版を読んでしまっているから、興味は無いということです。
 でも、フランス語を読めない人には、有益な情報ですよね。

The opinion is that cards were imported by the gipsies from India.
意見は、カードがジプシーによってインドから持ち込まれたということである。

 これは、ボワトー氏の主張そのままです。

There are also references to the so-called Chinese Tarot, which was mentioned by Court de Gebelin.
クール・ド・ジェブランにより言及された、いわゆる中国のタロットへの参照もある。

 東洋起源のカードの記事があります。
 せっかくなので、挿絵も貼っておきます。


クリックで拡大

『遊戯カードの歴史』より「中国のカード」

XIII

Origine des Cartes a Jouer. Par Romain Merlin. 4to, Paris, 1869.
『カード遊技の起源』。ロマン・マーリン著。四折判(A4相当)、パリ、1869年発行。
There is no basis for the Egyptian origin of the Tarot, except in the imagination of Court de Gebelin.
クール・ド・ジェブランの空想を除けば、タロットのエジプト起源の根拠は全く無い。

 ということを、著者は言っています。
 根拠の無い説を否定するのは、当然ですよね。

I have mentioned otherwise that the writer disposes, to his personal satisfaction, of the gipsy hypothesis, and he does the same in respect of the imputed connexion with India; he says that cards were known in Europe before communication was opened generally with that world about 1494.
私は、他のところで、作家が彼の個人的な満足のために、ジプシーの仮説を処分するかわりに、彼はインドに帰属された関係についても同じようにした、ということを言及した。彼は、交通手段が1494年頃に、その世界に広く開かれた以前には、カードがヨーロッパにおいて知られていたと述べている。

 著者の説は、ジプシーはエジプト出身ではなくインド出身であり、名称もジプシーではなくロマにすべきであり、そのロマがタロットを持ち込んだということです。
 エジプト起源説を否定しておいて、別の妄想説をデッチ上げています。

But if the gipsies were a Pariah tribe already dwelling in the West, and if the cards were a part of their baggage, there is nothing in this contention.
しかし、もしジプシーが西洋に既に住んでいるパーリア部族であり、カードが彼らの手荷物の一部であったならば、この論点は無意味である。

 ここは、ウェイト氏の論評です。
 「Pariah/パーリア」というのは、インド南部の最下層民のことで、一般的な浮浪者の意味もあります。
 タロットを持ち出したジプシー(ロマ)はインド北部の出身という説と対比させているような感じですね。
 まあ、ずっと以前から住み着いていた浮浪者が、市中に出回っていたカードを手に入れて賭博や占いに使っていたのであれば、インドから持ち込んだということにはならないということです。

The whole question is essentially one of speculation.
全ての論点は、本質的には推測の1つである。

 著者は色々と述べてはいるけれども、どれも根拠の無いものであり、推測の域を超えるものではないと、ウェイト氏は論評しています。
 結局のところ、古代エジプトにも古代インドにも、タロットの原型となったものは、まだ見つかっていないのです。

XIV

The Platonist. Vol. II, pp. 126-8. Published at St. Louis, Mo., U.S.A., 1884-5. Royal 4to.
『プラトン主義者』。第2巻、126-8ページ。アメリカ、ミズーリ州、セントルイス市で発行。1884-5年発行。ロイヤル四折判(B4相当)。

 この「The Platonist/プラトン主義者」は、1880年代に発行されていたオカルト雑誌みたいなものです。

This periodical, the suspension of which must have been regretted by many admirers of an unselfish and laborious effort, contained one anonymous article on the Tarot by a writer with theosophical tendencies, and considerable pretensions to knowledge.
この定期刊行雑誌は(それの休止は、非利己的で勤勉な労作の多くの賛美者により残念に思われたに違いないが)、神智学の傾向と、かなりの知識の自負を持つ執筆者によるタロットについての1つの匿名の記事を含んでいた。

 「pretensions/自負」というのは、根拠の無い見せかけという意味もありますので、ウェイト氏はこの記事に対しては、あまり高い評価はしていないような感じです。
 実際、ここでは完全にネタ扱いなのですが、パピュス氏もこのオカルト雑誌を読んでいて参考文献に挙げているので、ウェイト氏も興味を持ったのではないかと思います。

It has, however, by its own evidence, strong titles to negligence, and is indeed a ridiculous performance.
しかしながら、それは、それ自身の証拠において、無頓着の強い作品であり、本当に馬鹿げた見せ物である。

 ウェイト氏は、この記事は、証拠もいいかげんなもので、見せかけだけの主張であると、言っています。

The word Tarot is the Latin Rota = wheel, transposed.
タロットという言葉は、ラテン語のRota(=輪)の文字を入れ換えたものである。

 と、著者は言っていますが、何の根拠もありません。

The system was invented at a remote period in India, presumably--for the writer is vague--about B.C. 300.
(タロットの)体系は、遠い昔の時代のインドで…執筆者は明示していないのだが…紀元前300年頃に、発明された。

 と、著者は言っていますが、何の根拠もありません。

The Fool represents primordial chaos.
愚者は、原初の混沌を表している。

 と、著者は言っていますが、何の根拠もありません。
 なお、「primordial chaos/原初の混沌」といえば、『旧約聖書:創世記』1:2の「地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。」を連想しますよね。

The Tarot is now used by Rosicrucian adepts, but in spite of the inference that it may have come down to them from their German progenitors in the early seventeenth century, and notwithstanding the source in India, the twenty-two keys were pictured on the walls of Egyptian temples dedicated to the mysteries of initiation.
タロットは現在、薔薇十字団の達人により使用されているが、(紀元前300年前のインドでの発明という)推論にもかかわらず、それ(タロット)は、17世紀の初めに、彼ら(薔薇十字団)のドイツ人の先駆者から彼らに伝わったかもしれない。そしてインドの起源にもかかわらず、(大アルカナの)22の鍵が加入儀礼の秘密の儀式に供されたエジプトの寺院の壁に描写されていた。

 と、著者は言っています。
 まさに何でもありの、愚者的なカオス状態ですよね〜。

Some of this rubbish is derived from P. Christian, but the following statement is peculiar, I think, to the writer: "It is known to adepts that there should be twenty-two esoteric keys, which would make the total number up to 100."
このガラクタのいくつかは、P.クリスチャンに由来しているが、以下の供述は、この執筆者の独特なものであると、私は思う。 「最大100までの総数になるであろう22個の難解な鍵があるはずであることが達人に知られている。」

 さすがにガラクタだけあって、何のことかさっぱり解りません。

Persons who reach a certain stage of lucidity have only to provide blank pasteboards of the required number and the missing designs will be furnished by superior intelligences.
明晰さの一定の段階に達した人々は、ただ必要な数の空白のカードを与えるだけでよく、欠落している図案は、優れた知性により提供されるだろう。

 絵の描かれていないカードを、タロットのように展開すれば、自然と白紙のカードに絵が見えてくるということですかね。
 確かに、熟達した占い師の中には、展開されたカードを見ずに占い結果を話している人もいますけどね。

Meanwhile, America is still awaiting the fulfilment of the concluding forecast, that some few will ere long have so far developed in that country "as to be able to read perfectly . . . in that perfect and divine sybilline work, the Taro."
その一方で、アメリカは、いくらかの者が、やがてその国で「タロット…その完全で神の予言の作品…を完全に読み取ることができる」程度になるまでに発展するだろう、という最後の予測の実現を、まだ待っているところである。

 アメリカは、まだオカルト的には発展途上であり、さらなる進歩のために、様々なものを求めている最中であるということですよね。
 英語圏の新天地アメリカは、先進国のイギリスにとって大きな市場ですので、ウェイト氏は、アメリカでのオカルトの発展を期待しているようです。

Perhaps the cards which accompany the present volume will give the opportunity and the impulse!
おそらく、この本に伴うカードは、機会と衝動を与えるだろう!

 「この本に伴うカード」というのは、ライダーウェイト版タロットのことです。
 自画自賛している、おちゃめなウェイト氏でした。(笑)
 そして、目論見の通り、ライダーウェイト版タロットは、アメリカでも大ヒットしています。

XV

Lo Joch de Naips. Per Joseph Brunet y Bellet. Cr. 8vo, Barcelona, 1886.
『カードのくびき?』。ジョゼフ・ブルネット・y・ベレット著。クラウン八折判(B6相当)、バルセロナ、1886年発行。

 本の正式名称は「Lo Joch de Naibs, Naips o Cartas」なのですが、スペインのカタロニア語で書かれていますので、読めません。(汗)

With reference to the dream of Egyptian origin, the author quotes E. Garth Wilkison's Manners and Customs of the Egyptians as negative evidence at least that cards were unknown in the old cities of the Delta.
エジプトの起源の夢に関して、著者は否定的な証拠として、カードが少なくともデルタの古い都市では知られていなかったという、E.ガース・ウィルキンソンの「エジプト人の風習と慣習」を引用している。

 「Delta/デルタ」というのは、エジプトのナイル川河口の三角州地帯のことです。
 なお、このE.ガース・ウィルキンソン氏の「エジプト人の風習と慣習」という本は、似たようなものはあるのですが、特定できませんでした。

The history of the subject is sketched, following the chief authorities, but without reference to exponents of the occult schools. The mainstay throughout is Chatto.
主題(タロット)の歴史の概要が述べられており、主要な出典が伴っているが、神秘学界の解説者についての参照は無い。

割と元ネタは厳選されているようですね。

The mainstay throughout is Chatto.
あらゆる点での頼みの綱となっているのは、チャットである。

 W. A. チャット氏の主張をベースにした本だということですね。

There are some interesting particulars about the prohibition of cards in Spain, and the appendices include a few valuable documents, by one of which it appears, as already mentioned, that St. Bernardin of Sienna preached against games in general, and cards in particular, so far back as 1423.
スペインでのカードの禁止に関する、いくつかの興味深い詳細事項があり、そして、付録はいくつかの重要書類を含んでおり、明らかにされたものの一つは、既に言及されているように、シエンナの聖バーナディンが、1423年まで遡って、一般的なゲーム、特にカードに反対する説教をしたということである。
There are illustrations of rude Tarots, including a curious example of an Ace of Cups, with a phoenix rising therefrom, and a Queen of Cups, from whose vessel issues a flower.
原始的なタロットの挿絵があり、杯のエースとそこから飛び上がる不死鳥、そして杯の女王とその容器から花を出しているという、珍しい例を含んでいる。

XVI

The Tarot: Its Occult Signification, Use in FortuneTelling, and Method of Play. By S. L. MacGregor Mathers. Sq. 16mo, London, 1888.
『タロット:その神秘的な意味、占いでの使用法、遊ぶ方法』。S. L. マクレガー・マサース著。スクエア16折判(B7相当)、ロンドン、1888年発行。

 マサース氏(1854-1918)は、イギリスのオカルティストであり、1888年にゴールデン・ドーンが設立された時の三首領の一人です。
 B7サイズは、タロットカードとほぼ同じ大きさであり、カードに添付する小冊子としては、適切なサイズです。

This booklet was designed to accompany a set of Tarot cards, and the current packs of the period were imported from abroad for the purpose.
この小冊子は、タロットカードのセットに添付するために企画され、そして、目的のために海外から当時の流通しているデッキを輸入した。

 輸入タロットカードに小冊子を付けてイギリスで発行しようという企画があって、その小冊子の原稿をマサース氏が請け負ったということですよね。
 当時は、タロットは英国ではあまりポピュラーではなかったようで、タロットに関する文献も、英語のものは少なくて、ほとんどがフランス語でした。
 ですので、イギリスのオカルティストは、フランス語が読めることが必須条件でした。
 昔の日本でも、英語やフランス語が読めないと、本格的なオカルトの知識が得られないというのと同じ状態だったということです。

There is no pretence of original research, and the only personal opinion expressed by the writer or calling for notice here states that the Trumps Major are hieroglyphic symbols corresponding to the occult meanings of the Hebrew alphabet.
独創的な研究の見せかけが全く無く、著者によって表現される個人的な見解、またはここに注目を求めているものは、大アルカナがヘブライのアルファベットの神秘学的な意味に対応する象形文字の象徴であるということを、述べているだけである。

 これといって、目新しいものは何も無いという感じですかね。

Here the authority is Levi, from whom is also derived the brief symbolism allocated to the twenty-two Keys.
ここでの出典はレヴィであり、彼から同様にして、22の鍵に割り当てられた簡潔な象徴主義が引き出されている。

 内容的には、レヴィの受け売りだったということです。

The divinatory meanings follow, and then the modes of operation.
占いの意味がそのあとに続き、その後に、(占い)作業の方法がある。
It is a mere sketch written in a pretentious manner and is negligible in all respects.
それは、もったいぶった態度で書かれた単なる概要であり、あらゆる点で取るに足らないものである。

 って、ゴールデン・ドーンの元首領の一人に対して、ヒドいこと言ってますよね。
 ウェイト氏は、マサース氏のことを嫌っていたような感じですよね。

 ここに参考文献として挙げているのも、マサース氏に対して文句を言いたいだけのような気もしますね。(苦笑)

XVII

Traite Methodique de Science Occulte. Par Papus. 8vo, Paris, 1891.
『神秘学の系統的処理』。パピュス著。八折判(A5相当)、パリ、1891年発行。
The rectified Tarot published by Oswald Wirth after the indications of E'liphas Le'vi is reproduced in this work, which--it may be mentioned--extends to nearly 1,100 pages.
エリファス・レヴィの指示に従ってオスワルト・ウィルトにより発行された改正されたタロットは、この著作の中に複写されていて、この著作は…言及されているかもしれないが…およそ1,100ページに拡張されている。

オスワルト・ウィルト氏のタロットは、既に1889年に発行されているパピュス氏の『ボヘミアンのタロット』にも掲載されています。

There is a section on the gipsies, considered as the importers of esoteric tradition into Europe by means of the cards.
カードにより、ヨーロッパに秘密の伝統を持ち込んだ者であると考えられたジプシーについての項がある。
The Tarot is a combination of numbers and ideas, whence its correspondence with the Hebrew alphabet.
タロットは、そのヘブライのアルファベットと対応するところの、番号と観念の組み合わせである。

タロットとは、ヘブライ文字のアルファベットに対応しており、その番号と意味が割り当てられているという考えです。
問題なのは、どのカードがどの文字に対応するかということで、これについては色々と意見があります。

Unfortunately, the Hebrew citations are rendered almost unintelligible by innumerable typographical errors.
残念なことに、ヘブライの引用は、無数の印刷上の誤りにより、ほとんど理解できなくなっている。

XVIII

Eliphas Levi: Le Livre des Splendeurs. Demy 8vo, Paris, 1894.
『エリファス・レヴィ:光輝の書』。デマイ八折判(A5相当)、パリ、1894年発行。

 この本は、レヴィ氏(1810-1875)の死後の発行となっています。

 以下の3つあるカバラの基本思想書のうちの1つのフランス語への翻訳と注釈ですかね。
 ・セフェル・イェツィラー(Sepher Yetzirah) : Book of Formation : 形成の書(3〜6世紀)
 ・セフェル・ハ・ゾハール(Sepher ha-Zohar) : Book of Splendor : 光輝の書(13世紀)
 ・セフェル・ハ・バヒル(Sefer ha-Bahir) : Book of Illumination : 光明の書(12世紀)

A section on the Elements of the Kabalah affirms (a) That the Tarot contains in the several cards of the four suits a fourfold explanation of the numbers 1 to 10; (b) that the symbols which we now have only in the form of cards were at first medals and then afterwards became talismans; (c) that the Tarot is the hieroglyphical book of the Thirty-two Paths of Kabalistic theosophy, and that its summary explanation is in the Sepher Yelzirah; (d) that it is the inspiration of all religious theories and symbols; (e) that its emblems are found on the ancient monuments of Egypt.
カバラの原理についての項は、以下のように確言している。
(a) タロットが4つのスートの各カードに、1から10の数の4重の説明を含むこと。
(b) 現在我々が単なるカードの形でしか持っていない象徴(タロットカード)は、最初はメダルで、それから、その後、護符となったこと。
(c) タロットはカバラ神智論の32の小径の象形文字の本であり、そして、その概要の説明が「形成の書」にあること。
(d) それはすべての宗教的な理論と象徴の啓示であること。
(e) その寓意画は、エジプトの古代遺跡で見つけられること。
With the historical value of these pretensions I have dealt in the text.
これらの主張の歴史的な価値のために、私は本文中で論じている。

 タロットを論じる上では、カバラは避けては通れないですよね。
 ただし、余計なものまで混じっていますけど。

XIX

Clefs Magiques et Clavicules de Salomon Par E'liphas Levi. Sq. 12mo, Paris, 1895.
『ソロモンの魔法の鍵と鎖骨』。エリファス・レヴィ著。スクエア12折判(A6相当)、パリ、1895年発行。

 この本も、レヴィ氏(1810-1875)の死後の発行となっています。
 「Salomon/ソロモン」は、『旧約聖書:列王記』に出てくる古代イスラエルの王の名前です。

The Keys in question are said to have been restored in 1860, in their primitive purity, by means of hieroglyphical signs and numbers, without any admixture of Samaritan or Egyptian images.
問題の鍵は、サマリアまたはエジプトの印象を全く混和することなく、象形文字の記号と数により、それらの原初の純粋さで、1860年に修復されたと言われている。
There are rude designs of the Hebrew letters attributed to the Trumps Major, with meanings--most of which are to be found in other works by the same writer.
大アルカナと、その意味…その大部分は同じ作家による他の著作で見ることになる…に帰属されたヘブライ文字の粗雑な図案がある。
There are also combinations of the letters which enter into the Divine Name; these combinations are attributed to the court cards of the Lesser Arcana.
神の名前に入る文字の組み合わせもある。これらの組み合わせは小アルカナのコートカードに帰属すると考えられる。

 神の名前といえば、聖四文字のことですかね。

Certain talismans of spirits are in fine furnished with Tarot attributions; the Ace of Clubs corresponds to the Deus Absconditus, the First Principle.
最後に、精霊の護符はタロットの属性により提供される。棒のエースは、「隠される神」、「第一原理」に対応している。

 「Deus Absconditus/隠される神」はラテン語で、『旧約聖書:イザヤ書』45:15の「まことにあなたは御自分を隠される神」の部分が元ネタであり、人間には見えない神の存在を意味します。

The little book was issued at a high price and as something that should be reserved to adepts, or those on the path of adeptship, but it is really without value--symbolical or otherwise.
その小さい本は、高価であり、達人もしくは達人の地位への道を歩む者のために予約されるべき何かとして発行されたが、しかし、それは本当に…象徴的にも、もしくは他の点からも…価値の無いものである。

XX

Les xxii Lames Hermetiques du Tarot Divinatoire. Par R. Falconnier. Demy 8vo, Paris, 1896.
『22枚のヘルメスの板のタロット占い』。R. ファルコニア著。デマイ八折判(A5相当)、パリ、1896年発行。

 著者のルネ・ファルコニア(Rene Falconnier, 1857-1930)氏は、本業が俳優という、ちょっと変わった経歴を持っていました。

The word Tarot comes from the Sanskrit and means "fixed star," which in its turn signifies immutable tradition, theosophical synthesis, symbolism of primitive dogma, etc.
タロットという言葉はサンスクリット語に由来し、その回転の中に、不変の伝統、神智論の統合、根源の教義の象徴主義などを表す「恒星」を意味している。

 と、著者は述べています。
 「恒星」というのは天球上で動かない普通の星々のことで、ほぼ一日に一回転しており、太陽や月や惑星のように天球上を動き回る星とは区別されます。
 そして、それは変化しないものとして、様々なものの象徴となっています。

Graven on golden plates, the designs were used by Hermes Trismegistus and their mysteries were only revealed to the highest grades of the priesthood of Isis.
金色の板の上に彫刻された図案は、ヘルメス・トリスメギトスによって使用され、それらの秘密はイシスの聖職者の最も高い位階に明かされただけであった。

 という妄想を、著者は述べています。

It is unnecessary therefore to say that the Tarot is of Egyptian origin and the work of M. Falconnier has been to reconstruct its primitive form, which he does by reference to the monuments--that is to say, after the fashion of E'liphas Le'vi, he draws the designs of the Trumps Major in imitation of Egyptian art.
したがって、タロットがエジプト起源のものであると言うことは余計なことであり、ファルコニア氏の著作は、原初の形態を復元することであり、そこで、彼は、記念碑を参考にして行った。…すなわち、エリファス・レヴィの流行に倣って、彼はエジプトの芸術の模倣で大アルカナの図案を描いている。

 とりあえず、どんな挿絵なのかを貼っておきます。
 現在では、小アルカナを付けられて、78枚のタロットとして発行されています。

『22枚のヘルメスの板のタロット占い』のカードの画像(22枚)

This production has been hailed by French occultists as presenting the Tarot in its perfection, but the same has been said of the designs of Oswald Wirth, which are quite unlike and not Egyptian at all.
この作品は、その完璧さにおいてタロットを提示しているとしてフランスの神秘主義者により歓迎されたが、同じことはオズワルト・ウィルトの図案についても言われているが、それは、全く異なっており、全くエジプトのものではないのであるが。

 要するに、エジプト風ということであれば、中身は何でもいいわけです。

To be frank, these kinds of foolery may be as much as can be expected from the Sanctuary of the Comedie-Francaise, to which the author belongs, and it should be reserved thereto.
あからさまに言えば、これらの種類の愚行は、作者が属する「フランス喜劇の聖域」から予期できるのと同じくらい多いことであるだろうし、それはそこへと予約されるべきであろう。

 こういう本は、しょせん、茶番劇程度のものであり、本流にはなりえないもであるということですよね。
 ちなみに、「Comedie-Francaise」というのは、フランスの喜劇役者の協会みたいなもので、ファルコニア氏はそこに所属していたようです。

XXI

The Magical Ritual of the Sanctum Regnum, interpreted by the Tarot Trumps. Translated from the MSS. of E'liphas Le'vi and edited by W. Wynn Westcott, M.B. Fcap. 8vo, London, 1896.
『大アルカナより解釈された、神聖界の魔術儀式』。W. ウィン・ウエストコット M.Bによる、エリファス・レヴィの複数の原稿からの翻訳と編集。フールスキャップ八折判(A5相当)、ロンドン、1896年発行。

 ウィリアム・ウィン・ウェストコット氏(William Wynn Westcott, 1848ー1925)は、イギリスのオカルティストで、本業は検死官でした。
 マサース氏やウッドマン氏と共に、1888年にゴールデン・ドーンを創立しています。

It is necessary to say that the interest of this memorial rests rather in the fact of its existence than in its intrinsic importance.
この覚え書きの関心事は、その本質的な重要性よりもむしろその存在の事実であると言うことが必要である。

 どうでも良いものが、なぜか生き残っているという事実の方に、興味があるということですかね。

There is a kind of informal commentary on the Trumps Major, or rather there are considerations which presumably had arisen therefrom in the mind of the French author.
大アルカナの一種の非公式の論評、または、むしろ、おそらくフランスの著者の心に、そこ(大アルカナ)から生まれた考察がある。

 この「French author/フランス人の著者」は、おそらくレヴィのことであり、大アルカナについての妄想が述べられているということのようです。 

For example, the card called Fortitude is an opportunity for expatiation on will as the secret of strength.
例えば、「剛毅」と呼ばれるカードは、強さの秘密としての意志に関する詳述の機会である。
The Hanged Man is said to represent the completion of the Great Work.
「吊られた男」は、「偉大なる作業」の完成を表すと言われている。
Death suggests a diatribe against Necromancy and Goetia; but such phantoms have no existence in "the Sanctum Regnum" of life.
「死」は、降霊術と魔術に対して痛烈な非難を提議する。 しかし、そのような幻は人生の「神聖な場所界」に存在してはいない。
Temperance produces only a few vapid commonplaces, and the Devil, which is blind force, is the occasion for repetition of much that has been said already in the earlier works of Levi.
「節制」は、ごくわずかの気の抜けた平凡な文句を提示しているだけであり、そして、「悪魔」は、盲目的な力であり、レヴィの以前の著作の中で既に述べられている多くの復唱の出来事である。
The Tower represents the betrayal of the Great Arcanum, and this it was which caused the sword of Samael to be stretched over the Garden of Delight.
「塔」は、偉大なる秘密の裏切りを表し、これは歓喜の庭の上でサマエルの剣が引き伸ばされた原因となったものであった。

 「Samael/サマエル」というのは、旧約聖書の外典に出てくるユダヤ教の悪魔であり、毒や死を司る天使でもあります。
 サマエルは、その持ち物である火の剣で、塔を撃ったということですかね。

Amongst the plates there is a monogram of the Gnosis, which is also that of the Tarot.
板の中に、グノーシスのモノグラムがあって、それはまたタロットのものである。

 「monogram/モノグラム」というのは、アルファベットを組み合わせて作ったデザインです。

The editor has thoughtfully appended some information on the Trump Cards taken from the early works of Le'vi and from the commentaries of P. Christian.
編集者は、レヴィの以前の著作からとP.クリスチャンの論評から取られた「切り札(大アルカナ)」の上に、いくつかの情報を、思慮深く追加していた。

 まあ、「thoughtfully/思慮深く」というのも、ちょっと皮肉っぽく聞こえます。
 ウェストコット氏は、ゴールデン・ドーン設立時に、ある文書を捏造していますので、この本も捏造の可能性があるということを示唆しているのかもしれません。とはいえ、捏造というのは、オカルトの世界では普通にあることですけどね。

XXII

Comment on devient Alchimiste. Par F. Jolivet de Castellot. Sq. 8vo, Paris, 1897.
『錬金術師になる方法』。F. ジョリヴェ・ド・カステロ著。スクエア八折判(B6相当)、パリ、1897年発行。

 フランシス・ジョリヴェ・ド・カステロ氏(Francois Jolivet de Castellot, 1868-1939)は、フランスのオカルティストで、錬金術の研究家であり、錬金術に関する著作がいくつかあります。

Herein is a summary of the Alchemical Tarot, which--with all my respect for innovations and inventions--seems to be high fantasy; but Etteilla had reveries of this kind, and if it should ever be warrantable to produce a Key Major in place of the present Key Minor, it might be worth while to tabulate the analogies of these strange dreams.
この本の中には、錬金術のタロットの概要があり、それは…革新と発明に対する私の敬意をもってしても…高度な幻想であるように思われる。しかし、エッティラは、この種の空想を持ち、そしてもし、いつか現在の小さな鍵に代わって大きな鍵を作り出すことが保証できるのであるならば、これらの奇妙な夢の類推について表にするのは、価値があるかもしれない。

 新しいもの好きなウェイト氏ですが、さすがにこういうのは行き過ぎだと考えているようです。
 新奇性を狙うにしても、やり過ぎはいけませんよね。

 エッティラは、タロットと占星術と錬金術を組み合わせて、独自の理論を作り上げ、そして独自のタロットを考案して世間に広めました。
 エッティラのような単なる個人的妄想ではなく、きちんとした理論を立てて、タロットの謎解きをするのであれば、それはそれで良いことであると考えているようです。

At the moment it will be sufficient to say that there is given a schedule of the alchemical correspondences to the Trumps Major, by which it appears that the juggler or Magician symbolizes attractive force; the High Priestess is inert matter, than which nothing is more false; the Pope is the Quintessence, which--if he were only acquainted with Shakespeare--might tempt the present successor of St. Peter to repeat that "there are more things in heaven and earth, Horatio."
今のところは、以下のように考えられているという大アルカナへの練金術の対応が予定されていると言うのには十分であろう。手品師もしくは魔術師が引きつける力を象徴する。高等女司祭は不活性の物質であり、それは失敗にすぎない。法王は第五元物質であり、それは、…もし彼がシェークスピアに精通しているだけであれば…「天と地の中には、より多くのものがある、ホレイショー」を繰り返す聖ペテロの現在の後継者を誘惑したであろう。

 「Quintessence/第五元質」というのは四大元質(火水風地)に入らない至高の元質を指します。

 「Horatio/ホレイショー」というのは、シェイクスピアの『ハムレット』に出てくる登場人物で、ハムレットの友人です。
 これは、「この世界には、まだまだ人間の計り知れない多くのものがあるんだよ。」と、ホレイショーに言っているシーンです。
 なぜここで、このシーンが例え話として出てきたのかは、ちょっと理解できませんでした。

The Devil, on the other hand, is the matter of philosophy at the black stage; the Last judgment is the red stage of the Stone; the Fool is its fermentation; and, in fine, the last card, or the World, is the Alchemical Absolute--the Stone itself.
その一方で、「悪魔」は黒い段階の哲学の物質である。「最後の審判」は(賢者の)石の赤い段階である。「愚者」はその発酵である。そして、最後に、最終のカード、すなわち「世界」は、錬金術の絶対的なもの…(賢者の)石そのもの…である。

 大アルカナを賢者の石の錬成過程に対応させているわけですが、それなりに面白い試みだと思います。

If this should encourage my readers, they may note further that the particulars of various chemical combinations can be developed by means of the Lesser Arcana, if these are laid out for the purpose.
もしこれが私の読者を勇気づけるのであれば、彼らは、もしこれらが目的のために使われるならば、小アルカナによって様々な化学的な組み合わせの明細を開発できることに、さらに注目するかもしれない。

 錬金術には、怪しげな化学の実験が付き物ですよね。
 とりあえず、色々と混ぜ合わせて変化させるのは、実験の基本です。

Specifically, the King of Wands = Gold; the Pages or Knaves represent animal substances; the King of Cups = Silver; and so forth.
具体的には、棒の王=金。騎士見習もしくはジャックは動物的な物質。杯の王=銀。など。

 「animal substances/動物的な物質」というのは、錬金術実験で使う動物由来の材料や薬品のことですね。

XXIII

Le Grand Arcane, ou l'ccultisme devoile. Par Eliphas Levi. Demy 8vo, Paris, 1898.
『偉大なる神秘、もしくはベールを脱いだ神秘主義』。エリファス・レヴィ著。デマイ八折判(A5相当)、パリ、1898年発行。

 この本は、レヴィ氏(1810-1875)の死後の発行となっています。

After many years and the long experience of all his concerns in occultism, the author at length reduces his message to one formula in this work.
何年もの神秘主義における彼のすべての関心事の長年の経験の後に、ついに著者は、彼のメッセージをこの著作における1つの信条にまとめている。

 ついに明かされる、最後のメッセージって感じですよね。

I speak, of course, only in respect of the Tarot: he says that the cards of Etteilla produce a kind of hypnotism in the seer or seeress who divines thereby.
私は、もちろん、タロットに関することだけを述べる。彼は、エッティラのカードは、それによって占う、占い師もしくは女占い師に一種の催眠状態を引き起こすと述べている。

 エッティラの占いが、カリスマ的な人気になったのは、一種の催眠状態が原因だということですよね。
 まあ、そういう集団催眠的な商法というのは、オカルト商売においては必要不可欠な要素でもあります。

The folly of the psychic reads in the folly of the querent.
霊媒師の愚行は、質問者の愚かさを読み取っている。

 霊媒師というのは、愚劣なヤツらばかりだし、その客も同じぐらいアホだと言っています。
 でも、外から見れば、魔術師も霊媒師も占い師も、似たようなものだと思うのですが。(苦笑)

Did he counsel honesty, it is suggested that he would lose his clients.
彼は真実を忠告したならば、彼は顧客を失うだろうということが示唆される。

 馬鹿に対して馬鹿正直に馬鹿と言うヤツも馬鹿であるということです。
 正直さだけでは、生き残れない厳しい世界なのです。(苦笑)

I have written severe criticisms on occult arts and sciences, but this is astonishing from one of their past professors and, moreover, I think that the psychic occasionally is a psychic and sees in a manner as such.
私は、神秘術と神秘学に厳しい批評を書いていたが、しかしこれは彼らの過去の教授のひとりからの驚くべきことである。さらに、私は、霊媒師というものは時折、超自然的なものであり、そういうものとして見るものと考えている。

 ウェイト氏は、今まで、オカルト関係者に対して、かなり辛辣な批評を書いています。
 それは、当時の愚劣なオカルト商法が、真面目にオカルトを勉強しようとする人たちにとっては害でしかないということを言っているわけです。
 そして、偉大なるオカルティストであったレヴィも、同じようなオカルト批判をしているということですかね。

 そして、ウェイト氏にとっては、霊媒師というか心霊現象というものについては、頭では理解できないものであるから、まあそんなもんだと割り切った考えのようです。
 ウェイト氏は、占い師なんかも、似たような感じで、ちょっと冷めた目で見てますからね。

 ちなみに私も、わけわからないことを言う人は、ちょっと苦手です。(笑)

XXIV

Le Serpent de la Genese--Livre II; La Clef de la Magie Noire. Par Stanislas de Guaita. 8vo, Paris, 1902.
『創世記のヘビ、第2巻:黒魔術の鍵』。スタニスラス・ド・ガイタ著。八折判(A5相当)、パリ、1902年発行。

 スタニスラス・ド・ガイタ氏(1861-1897)は、フランスのオカルティストで、1888年にはパリで「薔薇十字カバラ団」を設立し、オズワルド・ウィルト氏やパピュス氏も加わっていました。

It is a vast commentary on the second septenary of the Trumps Major.
それは大アルカナに関する7つ組の2番目となる広大な論評である。

 著者は、この「Le Serpent de la Genese/創世記のヘビ」シリーズを、全部で7巻出版する予定だったようです。
 そして、第3巻目の執筆中に、未完のままで、薬物中毒により、若くして亡くなりました。
 ・第1巻の副題: 「Le Temple de Satan/サタンの神殿」 1891年発行
 ・第2巻の副題: 「La Clef de la Magie Noire/黒魔術の鍵」 1897年発行 ← ここまで本人が出版した
 ・第3巻の副題: 「Le Probleme du Mal/悪の問題」 1949年に、オズワルト・ウィルト氏により発行

Justice signifies equilibrium and its agent; the Hermit typifies the mysteries of solitude; the Wheel of Fortune is the circulus of becoming or attaining; Fortitude signifies the power resident in will; the Hanged Man is magical bondage, which speaks volumes for the clouded and inverted insight of this fantasiast in occultism: Death is, of course, that which its name signifies, but with reversion to the second death; Temperance means the magic of transformations, and therefore suggests excess rather than abstinence.
「正義」は、平衡とその因子を意味する。「隠者」は、孤独の神秘を表す。「運命の輪」は、変化もしくは到達の年輪である。「剛毅」は、意志の中の、力の内在を意味する。「吊られた男」は、魔術的な束縛であり、それは神秘主義の幻想文学作家の曇って倒錯した洞察を雄弁に物語っている。死は、もちろん、その名前が意味するものであるが、逆位置の場合は、第二の死の意味になる。「節制」は、変形の魔法を意味しており、したがって、禁欲よりもむしろ超過を示している。

 「吊られた男」のwhich以下の後半部分は、ウェイト氏の著者に対する皮肉ですかね。

 あと、「second death/第二の死」は、『新約聖書:黙示録』20:6,14,15の部分をネタにしている可能性があります。
 正位置では復活が期待できるが、逆位置だと、復活も不可能ということですかね。

There is more of the same kind of thing--I believe--in the first book, but this will serve as a specimen.
最初の本には、…私が信じているものと…同じある種類のものが、より多くあったが、この本は、標本として提供されるだろう。

 最初の1巻目の本は、まあまあ使えたけど、今度の本は、実用的な本というよりも、昔話ネタ的な本になったなぁ、という感じですかね。

The demise of Stanislas de Guaita put an end to his scheme of interpreting the Tarot Trumps, but it should be understood that the connexion is shadowy and that actual references could be reduced to a very few pages.
スタニスラス・ド・ガイタの死去は、彼のタロットの大アルカナを解釈する計画を終わらせたが、因果関係は実体の無いものであり、実際の言及は、ごくわずかなページに縮めることができることが理解されるべきである。

 要するに、ほとんど中身の無い本だよ、とウェイト氏は言っています。

XXV

Le Tarot: Apercu historique. Par. J. J. Bourgeat. Sq. 12mo, Paris, 1906.
『タロット:歴史の概要』。J. J. ブウジャ著。スクエア12折判(A6相当)、パリ、1906年発行。

 正確には、著者は、ジャン・ガストン・ブウジャ氏(Jean Gaston Bourgeat, ?-?)で、他にも魔術やタロットに関するいくつかの著作があります。

The author has illustrated his work by purely fantastic designs of certain Trumps Major, as, for example, the Wheel of Fortune, Death and the Devil.
著者は、例えば「運命の輪」「死」および「悪魔」のような、ある大アルカナの純粋に空想的なデザインで、彼の著作を図解していた。
They have no connexion with symbolism.
それらには、象徴主義との関係が全く無い。
The Tarot is said to have originated in India, whence it passed to Egypt.
タロットは、インドで創作され、そこからエジプトに渡ったと述べられている。
Eliphas Levi, P. Christian, and J. A. Vaillant are cited in support of statements and points of view.
エリファス・レヴィ、P.クリスチャン、およびJ.A.ヴァイヤンは、供述と観点を支持して引用されている。
The mode of divination adopted is fully and carefully set out.
採用された占いの方法は、完全で入念に記述されている。

 あまり中身は無さそうですが、占いの参考にするには、面白いのかもしれませんね。

XXVI

L'Art de tirer les Cartes. Par Antonio Magus. Cr. 8vo, Paris, n.d. (about 1908).
『カードを引く技術』。アントニオ・マグス著。クラウン八折判(B6相当)、パリ、発行日付なし(1908年頃)。

 ちなみに、別の資料によると、この本は1874年の発行になっています。

This is not a work of any especial pretension, nor has it any title to consideration on account of its modesty.
これは、何か特別な主張のある著作ではなく、また、その控え目なせいで考慮する題名も持っていない。

 まあ、中身についても、大したものは無いということのようです。
 題名も、初心者向きの占い本だし、あまり興味も無いということですかね。
 だったら、参考文献として挙げなければいいと思うのですが・・・。

Frankly, it is little--if any--better than a bookseller's experiment.
率直に言って、それは中身がほとんどなく、…たとえあったとしても…本屋の試供品よりもマシな程度である。
There is a summary account of the chief methods of divination, derived from familiar sources; there is a history of cartomancy in France; and there are indifferent reproductions of Etteilla Tarot cards, with his meanings and the well-known mode of operation.
よく知られた出典から得られた、占いの主要な方法の概要説明がある。フランスにおけるカード占いの歴史がある。そして、エッティラのタロットカードのどうでもよい復刻が、その意味とよく知られた(占い)作業の方法と共にある。
Finally, there is a section on common fortune-telling by a piquet set of ordinary cards: this seems to lack the only merit that it might have possessed, namely, perspicuity; but I speak with reserve, as I am not perhaps a judge possessing ideal qualifications in matters of this kind.
最終的に、普通のカードのピケットの組による一般的な占いの項がある。これは、所有してもいいという唯一の長所、すなわち、明快さを欠いているように思える。しかし、私は、おそらくこの種の問題に関する理想的な資格を持つ裁判官ではないので、私は話すことを遠慮しておく。

 「piquet set/ピケットの組」というのは、通常のトランプから2〜6とジョーカーを除いた32枚を一組とする、昔のフランスのゲームで使われていました。

 でも、「話すことを遠慮しておく」という言い回しは、どう見ても遠回しな皮肉ですよね。

In any case, the question signifies nothing.
とにかく、案件は何の意味も持っていない。

 この本には、全く中身は無いということですね
 だったら、参考文献として挙げなければいいのに。(苦笑)

It is just to add that the concealed author maintains what he terms the Egyptian tradition of the Tarot, which is the Great Book of Thoth.
それは、隠された著者が、偉大な「トートの書」であるタロットのエジプトの伝統と称したものを、維持しているということを、追加しているだけである。

 まあ、こういうのも、よくある妄想ネタだと思いますけど。

But there is a light accent throughout his thesis, and it does not follow that he took the claim seriously.
彼の論文を通じて、軽い強調があるけれども、それは彼が真剣に主張を受け止めたということにはならない。

ウェイト氏は、著者に何か恨みでもあるんですかね。(苦笑)

XXVII

Le Tarot Divinatoire: Clef du tirage des Cartes et des sorts. Par le Dr. Papus. Demy 8vo, Paris, 1909.
『タロット占い:カードと運命を引く鍵』。パピュス博士著。デマイ八折判(A5相当)、パリ、1909年発行。

 この本には、パピュス氏の指導でガブリエル・グーリナ氏(Gabriel Goudinat, 1883-1972)が描いたエジプト風のタロットカードの挿絵が描かれています。

The text is accompanied by what is termed a complete reconstitution of all the symbols, which means that in this manner we have yet another Tarot.
本文には、すべての象徴の完全な再構成(復元)と称するものが添付されており、それは、私たちが、このようにして、さらにまた別のタロットを持つということを意味している。

 「what is termed a complete reconstitution of all the symbols/すべての象徴の完全な再構成と称するもの」というのは、この本にある、エジブト風に改変されたタロットの挿絵のことです。
 今度もまた新しいデザインのタロットを発表して、物好きな占い師に新しい本やカードを買わせて、また儲けようという意図が見えているということではないかと思います。
 でもまあ、ウェイト氏も、同じように新デザインのカードと新解釈の本を出すわけですので、やんわりと皮肉混じりに言っています。
 せっかくなので、その挿絵を掲載しておきます。

パピュス氏の『タロット占い』の挿絵の画像(78枚)

 ちなみに、この挿絵は彩色されて、1982年に「パピュスのタロット」として、カードになって発行されています。

The Trumps Major follow the traditional lines, with various explanations and attributions on the margins, and this plan obtains throughout the series.
大アルカナは、欄外にある様々な説明と属性を含めて、伝統的な傾向に従っており、この計画は(タロットの)系列の全体にわたって行われている。

 この「traditional lines/伝統的な傾向」ですが、大アルカナはエッティラ氏、レヴィ氏、P.クリスチャン氏の意見を、小アルカナはエッティラ氏のデザインを採用しているようです。

 カードに色々と書き込みがあるのは、エッティラと同様ですが、こちらは欄外に書き込みするデザインです。
 初心者向けの占い目的のカードであれば、これはこれで役に立ちそうです。

From the draughtsman's point of view, it must be said that the designs are indifferently done, and the reproductions seem worse than the designs.
デッサン画家の観点からは、デザインは平凡になされており、その復刻は企画よりも悪く見えると言わざるをえない。

 パピュス氏の意図の良否はともかくとして、本文で意図されているものと比べると、描かれている挿絵のレベルが低いと言っているようです。
 ウェイト氏も、ライダー版の大アルカナのデザインについては、かなり口出ししていますので、いっぱしのデザイナー的な見方で、パピュス氏とその挿絵画家のデザインを批評しているようです。
 結局のところ、オレ様の文章と、オレ様の挿絵の方が、はるかにスゴいよと自慢しているということですよね。(笑)

This is probably of no especial importance to the class of readers addressed.
これはおそらく、対応する読者の階級には、特別な重要性は全く無い。

 ここの「the class of readers addressed/対応する読者の階級」というのは、『タロット占い』は占い初心者レベルを対象としたものなので、専門的分野にある程度通じているレベルにある人のことを指しているような感じです。
 ウェイト氏は、この本(The Pictorial Key to the Tarot)の読者は、このオレ様の文章さえ読んでおけば、これ以上この手の本を読む必要は無いということを言いたいのかもしれません。

Dr. Papus also presents, by way of curious memorials, the evidential value of which he seems to accept implicitly, certain unpublished designs of Eliphas Levi; they are certainly interesting as examples of the manner in which the great occultist manufactured the archaeology of the Tarot to bear out his personal views.
パピュス博士はまた、好奇心をそそる記念物のつもりで、彼が暗黙的に受け入れてるように思えるエリファス・レヴィの、いくつかの未発表の図案の、証拠となる価値のあるものを提示している。それらは確かに、偉大な神秘主義者が彼の個人的見解を実証するためにタロットの考古学を製作した姿勢の例として、興味のあることである。

 タロットを「manufacture/製作する」という表現は、工場で大量生産されるようなものを作る感じで、芸術性に欠けるイメージです。
 つまり、くだらないものを乱造しやがって、というレヴィ氏やパピュス氏に対しての皮肉となっているようです。

 そして、この本の第6章に、いくつかの興味深い挿絵が掲載されています。

We have (a) Trump Major, No. 5, being Horus as the Grand Hierophant, drawn after the monuments; (b) Trump Major, No. 2, being the High Priestess as Isis, also after the monuments; and (c) five imaginary specimens of an Indian Tarot.
我々は、以下のものを持つ。
(a) 記念像に倣って、大祭司としてのホルスが描かれている、大アルカナの第5番。
(b) また記念像に倣って、イシスとしての高等女司祭である、大アルカナの第2番。
(c) そして、インドのタロットの5個の想像上の標本。

 せっかくの挿絵ネタですので、ここに貼っておきます。


クリックで拡大

(a) 『タロット占い』より「タロットについてのエリファス・レヴィの未発表の資料」


クリックで拡大

(b) 『タロット占い』より「タロットについてのエリファス・レヴィの未発表の資料」


クリックで拡大

ヴィシュヌ神の第3の権化

クリックで拡大

ヴィシュヌ神の第10の権化

クリックで拡大

ヴィシュヌ神の第7の権化

クリックで拡大

ヴィシュヌ神の第9の権化

クリックで拡大

ヴィシュヌ神の第4の権化
(c) 『タロット占い』より「インドのタロット」
This is how la haute science in France contributes to the illustration of that work which Dr. Papus terms livre de la science e'ternelle; it would be called by rougher names in English criticism.
これはフランスにおける高等なる学問が、パピュス博士が「永遠の学問の本」と名付けた著作の挿絵としてどう寄与したかということである。
それはイギリスの文芸批評においては、より手荒い名前により呼ばれるだろう。

 このパピュス氏の本は、フランスのオカルト学の集大成といった感じですかね。
 ちなみに、歴史的には、イギリスとフランスは、色々な分野で対立関係にあって、かなり仲は悪いです。
 ウェイト氏は、生粋のイギリス人ですので、パピュス氏が属するフランスのことは、嫌っていたのでしょうね。
 このライダーウェイト版とマルセイユ系についても、そういう対立関係が見えます。
 アングロ・サクソン圏(イギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリア)では、ライダーウェイト版が優勢ですし、コンチネンタル圏(ヨーロッパ大陸)では、マルセイユ系がポピュラーです。

The editor himself takes his usual pains and believes that he has discovered the time attributed to each card by ancient Egypt.
監修者自身は、彼の普通の苦心をして、彼は古代エジプトによって各カードに帰せられた時間を発見したと信じている。

 この「editor/監修者」は、タロットのデザインを監修したパピュス氏のことを指しています。
 そして、このデザインが、「トートの書」本来の姿であると、言っているようです。
 まあ、あちこちで元祖「トートの書」、とか本家「トートの書」とかが乱立しているような状態ですよね。

He applies it to the purpose of divination, so that the skilful fortune-teller can now predict the hour and the day when the dark young man will meet with the fair widow, and so forth.
彼は、巧妙な占い師が、暗い青年が美しい未亡人などに出会う時の時間と日を、今すぐ予言できるように、占いの目的にそれを適用している。

 当たるのであれば、こういうのも、いい応用例ですけどね。
 とはいえ、ウェイト氏って、本当に占いを嫌っているような感じですよね。

XXVIII

Le Tarot des Bohemiens. Par Papus. 8vo, Paris, 1889. English Translation, second edition, 1910.
『ボヘミアンのタロット』。パピュス著。八折判(A5相当)、パリ、1889年発行。英語訳第2版、1910年発行。
An exceedingly complex work, which claims to present an absolute key to occult science.
きわめて複雑な著作であり、それは神秘学の絶対鍵を提供していると主張している。

「absolute key to occult science/神秘学の絶対鍵」は、レヴィ氏の『大いなる神秘の鍵』のところで出てきています。

It was translated into English by Mr. A. P. Morton in 1896, and this version has been re-issued recently under my own supervision.
それは1896年にA.P.モートン氏により英訳され、そしてこの英訳版は、最近、私自身の監督の下で再発行された。

 英訳の初版は、1896年に発行され、第2版は1910年の発行となっています。
 ウェイト氏は、この本(The Pictorial Key to the Tarot)を書きながら、こっちの英訳の仕事も請け負っていたということですね。

The preface which I have prefixed thereto contains all that it is necessary to say regarding its claims, and it should be certainly consulted by readers of the present Pictorial Key to the Tarot.
私がそこへ前に置いた序文は、その主張に関して述べる必要のあるもの全てを含んでおり、そしてそれは、この『タロットを解く絵の鍵(タロット図解)』の読者により、確実に参考にされることであろう。

 もし良かったら、この本と一緒に、こっちの本も買って読んでみてねという、ウェイト氏の遠回しな宣伝文句なのでした。(笑)

The fact that Papus regards the great sheaf of hieroglyphics as "the most ancient book in the world," as "the Bible of Bibles," and therefore as "the primitive revelation," does not detract from the claim of his general study, which--it should be added--is accompanied by numerous valuable plates, exhibiting Tarot codices, old and new, and diagrams summarizing the personal theses of the writer and of some others who preceded him.
パピュスが、象形文字の偉大な束を、「世界で最も古い本」として、「聖書中の聖書」として、したがって「原初の啓示」として見なしているという事実は、彼の一般的な研究の主張を損なってはいない。そしてそれには、…それ(彼の研究)に加えられるべき…新旧のタロットの古写本を提示する多数の貴重な版と、作家と彼に先行した他の何人かの個人的な命題を要約した図表が添付されている。

 「great sheaf of hieroglyphics/象形文字の偉大な束」は、おそらく大アルカナを指しています。

 パピュス氏のこの本での成果として、様々なパピュス氏の個人的見解だけでなく、過去の様々なタロットの図版収集と、過去の作家の主張を一覧にした図表に、価値を見いだしていますね。
 そして、このパピュス氏の本の内容について、ウェイト氏はかなり参考にしているような感じですね。

 ちなみに、この本には、マルセイユ版とオズワルト・ウィルト版の大アルカナの挿絵が掲載されています。

パピュス氏の『ボヘミアンのタロット』のオズワルト・ウィルト版の挿絵の画像(22枚)

The Tarot of the Bohemians is published at 6s. by William Rider & Son, Ltd.
『ボヘミアンのタロット』は6シリングで、ウィリアム・ライダー・アンド・サン株式会社により発行されている。

 最後まで宣伝している、商売熱心なウェイト氏でした。

XXIX

Manuel Synthetique et Pratique du Tarot. Par Eudes Picard. 8vo, Paris, 1909.
『総合手引書とタロットの実践』。ユード・ピカード著。八折判(A5相当)、パリ、1909年発行。

 ユード・ピカード氏(1867-1932)は、占星術で有名なオカルティストでした。

Here is yet one more handbook of the subject, presenting in a series of rough plates a complete sequence of the cards.
ここにまだ、粗雑な版にカードの完全な系列を提示している、主題(タロット)のもうひとつの手引書がある。

 最後を締めくくる本なのに、いきなり、どうでもいいような感じですよね。
 「rough plates/粗雑な版」ということなので、本文、もしくはカードの挿絵の出来は、あまり良くないようです。

The Trumps Major are those of Court de Gebelin and for the Lesser Arcana the writer has had recourse to his imagination; it can be said that some of them are curious, a very few thinly suggestive and the rest bad.
大アルカナは、クール・ド・ジェブランのものであり、そして、小アルカナに関しては、作者は彼の想像力をに頼っていた。それらのいくつかは興味深く、ごくわずかなものは少しだけ思わせ振りであり、そして残りのものは、ひどい出来であると言うことができる。
The explanations embody neither research nor thought at first hand; they are bald summaries of the occult authorities in France, followed by a brief general sense drawn out as a harmony of the whole.
説明は、自分自身で直接に調査したものも思考したものも含んでいない。それらは、フランスのオカルトの権威者たちの露骨な要約と、全体の調和として引き出された簡潔で一般的な意味が付き添われている。

 要するに、当時の流行に便乗した、普通の占い本ということです。
 まあ、売れてるものの二番煎じを出すのは、今も昔も変わらないのでした。

The method of use is confined to four pages and recommends that divination should be performed in a fasting state.
使用方法は、4ページに限られており、占いは断食状態で行われるべきであると推奨されている。
On the history of the Tarot, M. Picard says (a) that it is confused; (b) that we do not know precisely whence it comes; (c) that, this notwithstanding, its introduction is due to the Gipsies.
タロットの歴史について、ピカード氏は、以下のように言っている。
(a) それは混乱している。
(b)我々は、それがどこから来たのかを正確は知らない。
(c)それにもかかわらず、その序論は、(由来を)ジプシーに帰している。
He says finally that its interpretation is an art.
最後に彼は、その解釈は芸術であると述べている。

 そう、タロットの解釈は芸術=アートなのです。
 まあ、「art/芸術」ではない意味も、たくさんありますけどね。

 ウェイト氏は、最後の最後まで、世界中の有名なオカルティストの文献をこきおろしていますよね。
 そういう意味からすれば、皆が一目置くような、すごい人だったんだなぁ、とは思いますけど。(苦笑)


BACK HOME NEXT
inserted by FC2 system