ライダーウェイト・タロット解説

XI Justice / 正義



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As this card follows the traditional symbolism and carries above all its obvious meanings, there is little to say regarding it outside the few considerations collected in the first part, to which the reader is referred.
このカードは伝統的なシンボル体系に従っており、何よりもその見てわかる通りの意味を伝えている。そのため、第1章で集められた少数の考察以外のことで、読者が注目すべきものに関して述べることは少ししかない。

 まあ、マルセイユ系の従来のタロットを知ってる人なら、描かれた絵を見れば大体のところは分かるだろ、と言ってるわけですね。
 ちなみに従来デザインの踏襲であれば、この人物はギリシャ神話の法と掟の女神である「テミス」、もしくはテミスの娘であり乙女座の女神として天秤座の天秤を持つ正義の女神である「アストライア」ということになります。
 ウェイト氏は、PartT§2では、正義の女神=アストライア説を紹介しています。


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アストライアのレリーフ
(アメリカのバーモント州の庁舎)

 なお、一般的に「正義の女神」として司法の世界などで知られているのは、正義(Justice)を意味するローマ神話の「ユスティティア(Justitia)」です。
 古代の正義の世界にも、色々なタイプがあるみたいで、テミス女神やユスティティア女神は剣と天秤を持つ厳格派で、穏健派のアストライア女神は天秤だけを持って描かれることが多いです。

 なお、この「11:正義」のカードは、ゴールデーン・ドーンでは天秤座に配属されます。それゆえ、従来は11の番号であった「8:力(獅子座)」のカードと番号を交換されました。
 天秤座に配属ということから、ウェイト氏は、この女神を「テミス」ではなく「アストライア」としたかったのかもしれません。
 まあ、色々な解釈ができることもあり、ウェイト氏は、この人物が誰であるかを断言していないということです。

It will be seen, however, that the figure is seated between pillars, like the High Priestess, and on this account it seems desirable to indicate that the moral principle which deals unto every man according to his works--while, of course, it is in strict analogy with higher things;--differs in its essence from the spiritual justice which is involved in the idea of election.
しかしながら、柱の間に着席している人物は、「高等女司祭」に似ていると気づくであろう。それゆえに、彼(正義)の行為に従い全ての人に関係する人道主義を示すのが望ましいと見られる。…その一方で、もちろん、より高いものとの厳密な類推ではあるが…、それは、選択の概念に関与する霊的な正義という点では異なっている。

 ウェイト氏は、このカードは正義の女神と言われているが、実はそうではない、と言いたいわけです。

 「spiritual justice/霊的な正義」というのは、人間的な正義感というようなものではなくて、あくまでも「神に対しての正義」ということです。まあ、そういうと「神は全て正しい存在」ですから、かなり一方的に神の下僕っぽい感じの正義なんですけどね。

 あと、「idea of election/選択の概念」は、おそらく「人の自由意志による選択」ではなくて、「神が与える運命としての選択」だと思われます。

 まあ、何が言いたいかというと、多少異なる点はあるにしても、単なる「人としての正義をふりかざす」存在ではなく、「2:高等女司祭」に似た「神の意志=運命を司る」役割を持つ上位存在であると言っているわけですかね。

The latter belongs to a mysterious order of Providence, in virtue of which it is possible for certain men to conceive the idea of dedication to the highest things.
後者は、「神」の神秘的な位階に属している。そのため、最も高いものへの献身という観念を理解できる特定の人々には可能である。

 後者というのは、「spiritual justice/霊的な正義」を指しています。
 そして「highest things/最も高いもの」というのは、神自身というより、神の領域(位階)にあるものを指すと思われます。
 つまり、修行を積んで神の世界に精通した者のみが、このカードの持つ意味を理解できるであろうと言っているわけですね。

The operation of this is like the breathing of the Spirit where it wills, and we have no canon of criticism or ground of explanation concerning it.
この(正義のカードの)作用は、それが望んだ「聖霊」の息づかいに似ている。そして、私たちが批評するための規範や、それに関する解釈の基礎となるものを持っていない。

 このカードは、我々人間界での規範や法律のベースとなるものではなく、あくまでも精霊界でのみ作用すると言っているわけです。
 言い換えれば、現世の人間が作った法律には、全くとらわれないという見方もできますね。

It is analogous to the possession of the fairy gifts and the high gifts and the gracious gifts of the poet: we have them or have not, and their presence is as much a mystery as their absence.
それ(正義のカード)は、詩人の優美な才能、高等な才能、および上品な才能を所有することに類似している(我々が、それらを持っている/いないに関わらず)。そして、それらが存在することは、それらの不在と同じくらい多くの謎である。

 ウェイト氏にとって、詩人の書く優美で高等で上品な文章というのは、理解できない謎のような才能だったんですね。
 確かに、ウェイト氏の書く文章は、わかりにくくて酷評を受けることは多いのですが(笑)。

The law of Justice is not however involved by either alternative.
しかしながら、「正義」の法則は、どちらの代替案にも関係していない。

 ここの「law of Justice/正義の法則」は、この「11:正義」のカードの持つ意味を指します。
 要するに、「11:正義」のカードは、聖霊の人智を超えた能力とか、詩人のような一般的能力を超える特殊な才能とは無関係であるということですね。

In conclusion, the pillars of Justice open into one world and the pillars of the High Priestess into another.
結論として、「正義」の柱は、ある1つの世界へと開き、「高等女司祭」の柱は、もう1つの世界へと開いている。

 いきなりですが、「11:正義」の後ろにある2本の柱の幕の裏にある高位の世界と、「11:高等女司祭」の柱の幕の裏にある高位の世界は、似て非なるものだということを言っているようです。

 これは生命の木のパスにも示されていて、
 ・「11:正義」 = 6:ティファレト から 5:ゲブラー へ
 ・「2:高等女司祭」 = 6:ティファレト から 1:ケテル へ
というように、同じティファレトから出発して、「11:正義」は一つ上の階層へ、「2:高等女司祭」は一気に最上層へと達していますので、結果的に全く違う世界へと到達することになります。

 2本の柱の間をくぐって中に入ると、そこは神殿の中です。
 修行をして「11:正義」の謎を解き、柱の中に入るのは、比較的容易ではあるけれども、「2:高等女司祭」の謎を解くのは、普通の人には無理で、特殊なパスポートや難解な暗号を解く鍵が必要になりそうですよね。


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