ライダーウェイト・タロット解説

XVII The Star / 星



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A great, radiant star of eight rays, surrounded by seven lesser stars--also of eight rays.
大きな8つの光条を持つ光り輝く1つの星が、…同じく8つの光条を持つ…より小さい7つの星に囲まれている。

 8という数字は、再生・復活の象徴です。(「1:魔術師」の項を参照)
 このため、8つの光条を持つ星は、キリストを象徴している可能性があります。
 また、7という数字は、聖霊の数を象徴します。
 三位一体という考え方からすると、「子」と「聖霊」であれば「父」に相当するものがあるはずですが、ここには描かれていません。
 父なる神は、姿を描けない存在ということですかね。

The female figure in the foreground is entirely naked.
前景にある女性の姿は、完全な裸である。

 女性が何も身にまとっていないのは、現世の欲望や虚飾のない清浄無垢な状態を象徴しています。
 穢れのない、神の化身のような存在ということですね。

Her left knee is on the land and her right foot upon the water.
彼女の左のひざは陸の上に、そして彼女の右足は水の上にある。

 右足は、水中に没しているのではなく、水の上に乗っているようです。
 彼女には、水上歩行の能力があるということですかね。

She pours Water of Life from two great ewers, irrigating sea and land.
彼女は、2個の偉大な水差しから、「生命の水」を注ぎ、海と陸地を潤している。

 「great ewers/偉大な水差し」とありますが、ここの「great」の意味は単に「大きな」ということではなくて、神の力の「偉大さ」とか「深遠さ」に関係すると思われます。
 この水を注ぐというシーンからは、宗教的な「洗礼儀式」を連想させますね。
 このカードが、「16:塔」 の後に来ているのも、宗教的な入信儀式(initiation)に関連していると見ることもできます。

 一方、この「水差し」のイメージから、このカードは黄道12宮の「水瓶座」に割り当てられています。
 そういえば、「14:節制」の図案も、似たような水差しがありますが、「14:節制」は「いて座」に割り当てられています。

Behind her is rising ground and on the right a shrub or tree, whereon a bird alights.
彼女の背後には、隆起した地面があり、右側には低木あるいは高木があり、その上に1羽の鳥が留まっている。

 「shrub or tree/低木(灌木)あるいは高木」とあるのは、とりあえず「木」みたいなものという表現ですかね。なぜわざわざここで併記したのかは不明です。

 なお、この鳥はトキであると言われており、これはエジプトのトート神の象徴でもあります。


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トキの頭を持つトート神

The figure expresses eternal youth and beauty.
図(人物)は、永遠の若さと美を表現している。

 この若い女性は、不老不死の存在であり、尽きることのないものを表すということですね。

The star is l'etoile flamboyante, which appears in Masonic symbolism, but has been confused therein.
星は、「燃えさかる星」であり、それはフリーメーソンのシンボリズムに現れてはいるが、その点で混乱している。

 「l'etoile flamboyante/燃えさかる星」は、フランス語のようです。
 フリーメーソンは、五芒星や六芒星など、光芒を持つ星のシンボルを使うことが多いのですが、ウェイト氏は、この八芒星はフリーメーソンの象徴体系からパクられたものではないと言いたいわけですかね。

That which the figure communicates to the living scene is the substance of the heavens and the elements.
この図(人物)が生きている場面に授けているものは、天上の実体と、要素である。

 この「living scene/生きている場面」というのは、我々が生活している、この物質世界のことです。
 地上は緑が芽生え、生き物が住み着いていることを表しています。

 後半部分はちょっと難解ですが、「the substance of the heavens/天上の実体」というのは、天上の神の地上における実体ということで、あり、キリスト教における聖霊みたいなものだと推測します。
 また、「the elements/要素」は、キリスト教における聖体、もしくは地上世界を構成する物質的な四元素(火・水・風・土)です。
 この女性は神の化身であり、聖霊や聖体や元素を、天界から地上へと授けてくれる存在です。

 彼女の左手の水差しから流れ出た水が、5本の流れになっているのは、この天上の実体+四要素を象徴しているという見方もあります。
 なお、この地上世界を構成する四要素の水の流れは、『旧約聖書:創世記』2:10 の「エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。」の部分を連想させますね。

 ちなみに、タロットでは、大アルカナが「天上の実体」に、小アルカナが「四要素」に相当します。

It has been said truly that the mottoes of this card are "Waters of Life freely" and "Gifts of the Spirit."
このカードに関するモットーが、「惜しげなく流れる命の水」と「霊の賜物」と言われているのは正当である。

 この部分は、『新約聖書:ヨハネ福音書』4章で、イエスが水を汲みに来たサマリアの女との対話を連想させます。
 その一部のみ引用しますと、『新約聖書:ヨハネ福音書』4:10 の「イエスは答えて言われた。「もしあなたが、神の賜物を知っており、また、『水を飲ませてください』と言ったのがだれであるか知っていたならば、あなたの方からその人に頼み、その人はあなたに生きた水を与えたことであろう。」
 つまり、「Waters of Life freely/惜しげなく流れる命の水」は神に仕えし者の永遠の命、そして「Gifts of the Spirit/霊の賜物」は尽きることのない神の愛や恵みということでしょうか。

The summary of several tawdry explanations says that it is a card of hope
いくつかの安っぽい解釈を要約すると、それは希望のカードであると言っている。

 ここは、いつものウェイト氏のパターンで、従来の解釈を全否定する気マンマンです。
 たぶん、この従来解釈は、次の文章から推定すると、ポール・クリスチャン氏の解釈だと思われます。
 ポール・クリスチャン氏は、このカードの意味を「Hope/希望」としていました。

On other planes it has been certified as immortality and interior light.
別の次元では、それは不死と内なる光として認定されていた。

 ここの記述も、実はポール・クリスチャン氏の解釈の全否定です。
 ポール・クリスチャン氏は、神界では「不滅」を、知識界では「Inner Light that illuminates the Spirit/魂を照らす内なる光」、物理界では「Hope/希望」を表すと言っていますが、ウェイト氏は、そういうものとは違うということを言いたいわけですね。

For the majority of prepared minds, the figure will appear as the type of Truth unveiled, glorious in undying beauty, pouring on the waters of the soul some part and measure of her priceless possession.
準備のできた大多数に関しては、この図(人物)は、ベールを脱いだ「真実」の典型、不朽の美の栄光、ある部分に魂の水を注ぐこと、彼女の貴重な所有の測定として見えるだろう。

 「the majority of prepared minds/心の準備のできた大多数」というのは、オカルトの知識を持った他の人たち、つまり自分以外の占い師やオカルト研究家や魔術師のことを指していると思われます。
 つまり、ここでもウェイト氏は、こういったオカルト主義者の従来解釈を、暗に否定しているわけですね。

But she is in reality the Great Mother in the Kabalistic Sephira Binah, which is supernal Understanding, who communicates to the Sephiroth that are below in the measure that they can receive her influx.
しかし、彼女は実際、カバラのビナーのセフィラにいる「グレートマザー(母なる神)」であり、それは天界の「理解」であり、以下にあるセフィロトに対して、彼女の流入を受けることができるだけの適量を授けている。

 ここからの流出は、怒濤の流れではなく、後に続くものにとって適量でゆるやかなものということですかね。
 まあ、いやがる子供に、無理矢理飲み食いさせても、ロクなことはないですから。

 ところで、「ビナーのセフィラにいるグレートマザー」といえば、「2:高等女司祭」や「3:女帝」との関連が気になります。
 着ている服の量からすれば、その重要性は
   高等女司祭 > 女帝 > 星
という関係になりますが、やはり男から見た女性の魅力としては
   星 > 女帝 > 高等女司祭
ですかね。(^^;;


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