ライダーウェイト・タロット解説

XIX The Sun / 太陽



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 ゴールデン・ドーンでは、このカードは太陽に配属されており、ひまわりの花(sunflower)は、太陽を象徴する花です。
 一見すると単純明快に見えるこのカードにも、色々と秘密が隠されています。

The naked child mounted on a white horse and displaying a red standard has been mentioned already as the better symbolism connected with this card.
白馬に乗り、赤い紋章旗を掲示している裸の子供は、このカードに関連づけられた、より良い象徴主義として、既に言及されている。

 レヴィ氏は、『高等魔術の教理と儀式』の中で、このカードの3パターンのデザインについて言及しています。
  (1)輝く太陽と、要塞の囲いのなかで手をつなぐ二人の裸の子供。
  (2)運命の糸を紡ぐ女。
  (3)白馬に跨り、深紅の旗をかざす一人の裸の子供。
 マルセイユ版やパピュス氏は、(1)ですが、ウェイト氏は当時流行していた(1)ではなく、ちょっと流行遅れとなっていた(3)を採用したようです。
 とことん、あまのじゃくな人ですよね。(笑)

It is the destiny of the Supernatural East and the great and holy light which goes before the endless procession of humanity, coming out from the walled garden of the sensitive life and passing on the journey home.
それ(子供)は、「超自然の東」の運命と、人類の終わりなき前進を先導する偉大で聖なる光であり、塀で囲まれた傷つきやすい生命の庭から外へ出て、故郷へと旅立つことを伝えている。

 「Supernatural East/超自然の東」という言葉は、この場所が物質界ではなく天上界に存在する「エデンの園」であることを暗示しています。
 『旧約聖書:創世記』2:8には「主なる神は、東の方にエデンの園を設け、自ら形つくった人をさこに置かれた。」とあります。
 つまり、この子供は、生まれたばかりのアダムであるということです。

 なお、従来の「18:太陽」の子供たちは「無機質で堅固な囲いの中」にいましたが、ウェイト氏は「花咲く低い塀の外」に子供を配置し、さらに馬に乗せて旅立たせています。
 この点で、従来とは全く違う思想でデザインされていることがわかりますよね。


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従来(マルセイユ版)タロットの太陽

 これともう一つ、この子供の頭にある赤い羽根も注目すべきところです。
 これは「0:愚者」や「13:死」の頭にある赤い羽根と同じものであり、この子供の姿は「愚者の旅」の途中の姿であり、アダムやイエス・キリストの姿ではないかと推測できます。
 そして、それぞれが手に持っているのは、
  0:愚者 … 白い薔薇 = 錬金術の白化
  13:死 … 黒い旗 = 錬金術の黒化
  19:太陽 … 赤い旗 = 錬金術の赤化
であり、この太陽の子供は、錬金術的に見れば「賢者の石」であり、黄金であり、キリストでもあるということになります。
 従来のマルセイユ版の太陽が「男と女」の2人の子供で未熟成の成分だとすれば、このウェイト氏の太陽は、一人の完成された両性具有の人間、つまり「アダム・カドモン」ということになるのでしょうかね。

The card signifies, therefore, the transit from the manifest light of this world, represented by the glorious sun of earth, to the light of the world to come, which goes before aspiration and is typified by the heart of a child.
したがって、カードは、地球における輝かしい太陽により象徴された現世の顕在的な光から、大志を先導し子供の心によって象徴される来たるべき世界の光までの経過を意味する。

 ここはまさに、キリストの降臨といった感じですね。この部分は、『新約聖書:ルカ福音書』18:17の「まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに、はいることはできません。」の部分を連想させますね。

But the last allusion is again the key to a different form or aspect of the symbolism.
しかし、最後の引用は、再び、象徴主義の異なった形式あるいは局面の鍵である。

 この「19:太陽」のカードも、直前の「18:月」のカードと同じように、「神秘主義」を解く鍵となるということを言っています。

The sun is that of consciousness in the spirit -- the direct as the antithesis of the reflected light.
太陽は魂の中にある意識であり、…反射光とは正反対の直接なるものである。

 ここでいう「reflected light/反射光」とは、「18:月」の光のことになります。
 「月」が間接的で潜在意識をぼんやりと照らすものであり、「太陽」は直接的で顕在意識を明るく照らすものということですかね。
 この両者が結合することで、完全なるものが生まれてきます。


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錬金術の結合

The characteristic type of humanity has become a little child therein--a child in the sense of simplicity and innocence in the sense of wisdom.
人間性の型は、…純真さの意味における子供と、知恵の意味における無垢…という中において、幼い子供になっている。

 月の銀色の導きは、錬金術の白化に作用し、太陽の黄金色の導きは、錬金術の赤化に作用します。
 この月と太陽の導きにより、完全な体となってよみがえったので、この幼い子供の姿になったということです。


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太陽と月の結合

In that simplicity, he bears the seal of Nature and of Art; in that innocence, he signifies the restored world.
その純真さでは、彼は「自然と人工」の封印を有している。その無垢さでは、彼は修復される世界を意味している。

 ここも錬金術的な意味で解釈する必要があります。
 「the seal of Nature and of Art/自然と人工の封印」というのは、その体内に内包された月と太陽の二重性に関する性質で、純粋な「賢者の石」の特徴を表し、この汚れた世界を修復して、完全なる黄金の世界へと変化させていきます。

When the self-knowing spirit has dawned in the consciousness above the natural mind, that mind in its renewal leads forth the animal nature in a state of perfect conformity.
自然な精神を超えて自己を知る魂が意識の中で夜明けを迎えたとき、その更新された精神は、完全な一致の状態で動物的本質を先に立って導きます。

 「18:月」では下等なザリガニや野生の狼や犬だった「自然」は、「19:太陽」においては、完全に飼い慣らされた馬へと進化しています。

 この「19:太陽」のカードは、朝の太陽が東から登り、数々の神秘が起こり、完全体となって蘇ったシーンだということですね。
 そして、純化された完全体である「賢者の石」は、人間の中にある物質的・動物的本質を完全にコントロールできるということです。
 物質的・動物的本質に支配された「15:悪魔」とは対極にあるカードということがいえますね。

 最後に、錬金術ネタから、もう一枚。
 下にある銀色の月を白馬に置き換えれば、この絵は「19:太陽」のカードのシンボルと似た感じになります。


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錬金術の木

 つまり、「19:太陽」のカードは、錬金術のシンボルだらけだったということです。
 ウェイトさん、今回は色々とヤリ過ぎではないかと。(笑)


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