ライダーウェイト・タロット解説

XXI The World / 世界



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 大アルカナの最後を飾るカードですね。
 名前もでっかく「世界」です。
 一見単純に見えるシンボルですが、実はここにも色々なものが隠されています。
 え、布で隠されているところが一番の神秘ですって?

As this final message of the Major Trumps is unchanged--and indeed unchangeable--in respect of its design, it has been partly described already regarding its deeper sense.
「大アルカナ」のこの最終メッセージは、その図案の点では、(従来のものから)変化していない…そして本当に不変であり…、その深い意味に関しては、既に部分的に説明している。

 このカードの従来解釈についての詳しい説明が、この本のPartT§2 にあります。
 確かに、図案的には従来のものから大した変化はありませんが、ウェイト氏は、その解釈については従来のものとはかなり違うものを作り上げています。

 なお、デザインについては、「10:運命の輪」にも似たようなシンボルが多用されていますので、そちらの解説も参考にしてください。
 ちなみに、この「21:世界」のデザインは、下のものにも非常に類似しています。


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キリストと四福音書記者

 まあ、キリストの姿では萌え要素が足りないので、タロットでは、より普遍的な人気のあるエロいギャルに置き換えたということですかね。(笑)

It represents also the perfection and end of the Cosmos, the secret which is within it, the rapture of the universe when it understands itself in God.
それはまた、「宇宙」の完成と終点、およびその(宇宙の)内部にある秘密、それ自体を「神」の側で理解しているときは宇宙の有頂天を象徴している。

 完成した宇宙は「Cosmos(秩序ある宇宙)」であり、旧約聖書の『創世記』で宇宙が作られる以前の状態は、「Chaos(天地創造以前の混沌)」でした。そういう意味では、宇宙の完成は終わりでもあり、大アルカナのラストにふさわしいカードでもあります。

 「rapture/有頂天」という言葉には、「rapture/携挙(けいきょ)」という意味もあり、これは最後の審判の後、キリストが天から再臨するときに、地上のキリスト教徒が不死の体になり空中に持ち上げられてキリストに会うという出来事を指しています。1830年代および1970年代に前千年王国論者と天啓史観論者の間で人気があったそうです。
 つまり、何が言いたいのかというと、このカードは、死者が甦って「天に戻る場所」とか「天へと上昇できる場所」であり、人生の終末点ということになります。
 まあ、天に昇れなかった者は、地獄行きなんですけどね・・・。

 また、この「21:世界」カードは、ゴールデン・ドーンでは占星術の土星に配属されます。
 土星は、古代に知られていた太陽系で最遠の惑星だったので、ここが宇宙の果てと考えられた可能性もあります。ちなみに、土星の外の天王星は1781年、海王星は1846年に発見されていますので、ウェイト氏は当然ながら当時の天文学知識は有していると思われますが、ゴールデン・ドーンでは古代の知識のままで占星術解釈を行っていたので、それに合わせたのだと思われます。
 当時は既に、土星に輪があることは知られていましたので、この「21:世界」の輪も、ひょっとすると土星の輪を意識したものかもしれませんね。

It is further the state of the soul in the consciousness of Divine Vision, reflected from the self-knowing spirit.
それは、自己を知る精神から反映された、「神の洞察力」の意識の中へと、魂の状態をさらに深めることである。

 こちらは、「MicroCosmos/小宇宙」に関する説明になります。
 自己を知り、神を知れば、人の魂は物理世界の束縛を離れて、神の世界へと向かうことができるということですよね。

 ミステリーアートで行っていたパスワーキングは、この世界のカードを、タロット世界への入り口として使うことが多いです。

But these meanings are without prejudice to that which I have said concerning it on the material side.
しかし、これらの意味は、私が物質的な面でそれに関して述べた偏見の外部にあるものである。

 つまり、ウェイト氏は、このカードに従来からある物質的な面での意味は、眼中に無いと言いたいわけです。
 今までの説明も、物質的なものではなく、あくまでも精神的や霊的な世界の話であると念押ししているわけですね。

It has more than one message on the macrocosmic side and is, for example, the state of the restored world when the law of manifestation shall have been carried to the highest degree of natural perfection.
それは、大宇宙の側において1つ以上のメッセージを持っており、例えば、顕現の法が自然の完成を最高の段階に運んだ時の、復活した世界の状態であるという。

 ここでいう「macrocosmic side/大宇宙の側」というのは、物質的宇宙のことです。つまりこれは、「law of manifestation/顕現の法」という宇宙の法則というか物理法則が確定し、この私たちの住む物質的宇宙が生まれて完成したことを示すというものですね。

 ウェイト氏は、このカードは、あくまでも「物質的=macro」ではなく「精神的=micro」なものでなければならないと考えています。
 そういう意味からすると、この上記の文章の解釈については、否定的に捉える必要があります。
 ウェイト氏は、否定的な見解の場合は、高い確率で「過去完了」にする傾向がありますので、おそらくこれも否定的です。

But it is perhaps more especially a story of the past, referring to that day when all was declared to be good, when the morning stars sang together and all the Sons of God shouted for joy.
しかし、それはさらにずっと過去の話であろう。すべてを良しと宣言され、朝の星々が一緒に歌い、すべての神の子が歓声をあげた時の、あの日に関することである。

 やっぱり否定的だったんですね。(笑)
 ここで述べているのは、『旧約聖書:創世記』の冒頭にある天地創造の物語の部分です。
 つまり、そんな物質的・物理的な創造と完了の話は、創世記の冒頭で終わっていて、この「21:世界」のカードはそんなことを言っているわけではないと言いたいわけです。

One of the worst explanations concerning it is that the figure symbolizes the Magus when he has reached the highest degree of initiation; another account says that it represents the absolute, which is ridiculous.
それに関する最も悪い説明の一つは、この人物が参入儀式の最も高い階級に達したときの「魔術師」を象徴しているというものである。別の説明では、絶対的存在の象徴と言っているが、それは、ばかげている。

 ここは、いつもながらの、ポール・クリスチャン氏への攻撃ですね。
 ポール・クリスチャン氏の『魔術の歴史』には、「This is the sign with which the Magus decorates himself when he has reached the highest degree of initiation/これは魔術師が参入儀式の最高の位階に達した時に自らを飾る象徴である。」と書かれていますが、これは最も悪い説明だということです。

 また、「絶対的存在の象徴」と言っているのは、おそらくパピュス氏の『ボヘミアンのタロット』で、「This symbol represents Macrocosm and Microcosm, that is say, God and the Creation, or the Law of the Absolute./このシンボルは、マクロコスモスとミクロコスモス、つまり、神と天地創造、もしくは絶対的な法を意味する。」と書かれています。

 わがままなウェイト氏は、とことん従来説を否定しています。

The figure has been said to stand for Truth, which is, however, more properly allocated to the seventeenth card.
人物は「真理」を表すとも言われているが、それは、しかしながら、より適切に17番目のカードに割り当てられている。

 この人物のことを「Truth/真理」と呼んでいたのは、レヴィ氏の『高等魔術の教理と儀式』です。
 ここでもやっぱり否定的です。
 ちなみに、「17:星」のカードの人物像も、従来は「真理」と呼ばれていましたが、ウェイト氏は、こちらに割り当てる方がまだマシだと考えているようですね。

Lastly, it has been called the Crown of the Magi.
最後に、それは「魔術師の王冠」と呼ばれていた。

 ポール・クリスチャン氏の『魔術の歴史』は、このカードのことを「The Crown of the Magi/魔術師の王冠」と呼んでいます。
 もちろん、ウェイト氏のことですから、これも全面否定で間違いないですね。(笑)

 さて、ここから先は、妄想謎解きのコーナーです。(ソースありません)

 このカードの女性像が持っている魔法の杖は、「1:魔術師」のものと全く同じ形です。
 ただし、男性イメージの「1:魔術師」は1本の雲龍型土俵入りですが、女性イメージの「21:世界」は2本で不知火型土俵入りです。
 これは、1が男性原理、2が女性原理を象徴するからです。

 「21:世界」の女性像の頭上にある赤いリボンは、おそらく∞の形となっていて「1:魔術師」と同じですが、「21:世界」には下にも赤いリボンがあり、2という女性原理と、「上の如く下も然り」という、上位世界と下位世界の結合を意味しています。

 四大元素も、「1:魔術師」のものと見た目は違いますが、「21:世界」にもきちんと揃っています。

 「21:世界」にある、ぐるっと取り巻いた葉の輪は「ウロボロスの蛇」を表し、これも「1:魔術師」の腰の蛇と同じシンボルです。
 これは「終わりは始まりである。」とか「始まりも終わりも無い完全なもの。」とか「循環」とか「永遠」とか「死と再生」を表します。

 そして、「21:世界」のスカーフは、この女性に巻き付いた蛇のような形に見えますよね。
 そう、この女性像の真の姿は、実は「天上のイブ」ということを暗示しているのです。


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イブと蛇

 ちなみに、「1:魔術師」は「天上のアダム」ということになり、これでめでたく「1:魔術師」と「21:世界」は男性原理と女性原理の結合の法則に従って、ウロボロス的無限循環の永遠世界が完成するというわけです。

 始まりは終わりであり、終わりは始まりである。
 人生オワタ…、でも実はまだ終わっていない的な、究極な投げオチっていう感じでいいですよね〜。(笑)


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