ライダーウェイト・タロット解説

VI The Lovers / 恋人たち



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The sun shines in the zenith, and beneath is a great winged figure with arms extended, pouring down influences.
太陽は頂上で光り輝き、その下には、立派な翼を持つ人物が両手を広げ、下方へと影響を及ぼしている。

 この赤い髪と赤い翼を持つ天使は、太陽と火の支配者である大天使ミカエルで、火の属性を持つ大天使ミカエルは、「最後の審判」にも出現します。
 以前のタロットでは、天使ではなく、ローマ神話の愛の神キューピットが登場していました。

In the foreground are two human figures, male and female, unveiled before each other, as if Adam and Eve when they first occupied the paradise of the earthly body.
最前面には、お互い前を隠していない男性と女性の2人の人物があり、彼らはあたかも最初に地上の楽園を占有した「アダム」と「イブ」のようである。

 以前のタロットの構図は、アダムとイブではなく、普通の着衣姿の人間でした。
 ずいぶんと大胆に構図を変えてきましたね。
 カードイメージの変更は、ゴールデンドーンがこのカードを双子座に配属したことに関係があります。

Behind the man is the Tree of Life, bearing twelve fruits, and the Tree of the Knowledge of Good and Evil is behind the woman; the serpent is twining round it.
男性の後方には、12個の実を結ぶ「生命の木」があり、そして、女性の後方には「善悪の知識の木」がある。そしてヘビが、それ(善悪の知識の木)に巻きついている。

 ここの「Tree of Life/生命の木」は、『新約聖書:黙示録』22:2の「川は、都の大通りの中央を流れ、その両岸には命の木があって、年に十二回実を結び、毎月実をみのらせる。そして、その木の葉は諸国の民の病を治す。」に基づいています。

 そして「Tree of the Knowledge of Good and Evil/善悪の知識の木」は、『旧約聖書:創世紀』2:9の「主なる神は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。」にあります。

 また、「serpent/蛇」は、『旧約聖書:創世紀』3:1の「主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」」のものです。
 蛇は、聖書の物語上では人間より知恵のある生き物だったので、「善悪の知識の木」に関係付けされているわけですね。


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アダムとイブ(ティツィアーノ作)

The figures suggest youth, virginity, innocence and love before it is contaminated by gross material desire.
(二人の)人物像は、著しい物質的欲望により汚染される以前の、青春期、処女性、無実と愛を暗示している。

 まあ、エデンの園のアダムとイブそのものの話ですね。
 ちなみに、アダムとイブは裸体で描かれますが、これは神聖で無垢で罪の無い状態を表しているということですね。

This is in all simplicity the card of human love, here exhibited as part of the way, the truth and the life.
これは全体として見ると単純で、人間愛を表すカード、ここでは達成への道程、真実、そして生命の一部として表現されている。

 なんか単純でないややこしい文章ですが、そういうことらしいです。
 人間愛って、単純な愛情というものではなく、結構難しいことみたいですね。

It replaces, by recourse to first principles, the old card of marriage, which I have described previously, and the later follies which depicted man between vice and virtue.
それ(新しいカード)は、最初の原則に頼ることにより、私が前に(PartT§2)解説した「結婚」の古いカード、そして後には「悪徳(女)と美徳(女)の間にいる男」という愚行のカードに取って代わる。

 「marriage/結婚」はジェブラン氏の『原始の世界』にあるタイトルで、後の「man between vice and virtue/悪徳と美徳の間にいる男」というのは、レヴィ氏の『高等魔術の教理と祭儀』でのタイトルですが、どちらも間違った解釈であり、オレの「人間愛」という解釈の方が正しいと言いたいわけですよね。

In a very high sense, the card is a mystery of the Covenant and Sabbath.
非常に高い意味においては、このカードは「(神との)契約と安息日」の神秘を表している。

 「契約と安息日/Covenant and Sabbath」というのは、ユダヤ・キリスト教において、特別重要な意味を持ちます。
 秘密の儀式のキーワードは、やっぱり「神との結婚」なんでしょうかね。
 それとも、地上において分離してしまった男女の魂が一体化して、神の姿に戻るということでしょうか。

The suggestion in respect of the woman is that she signifies that attraction towards the sensitive life which carries within it the idea of the Fall of Man, but she is rather the working of a Secret Law of Providence than a willing and conscious temptress.
女性に関する暗示は、彼女が「人間の堕落」という考えを伴う感受性を持つ生命に向かう引力というものを意味している。しかし、彼女は自発的に罪を意識して誘惑した女性というより、むしろ「神の秘密の律法」の作用である。

 「人間の堕落/Fall of Man」は、堕落した男ではなく、人類全体(アダムとイブ)の堕落、つまり神の言いつけを守らなかったため、エデンから追放されて地上へと堕ろされたことです。
 そしてそれは、実は堕落(=神に対する背徳)ではなく、「神の操り人形」から「意志を持つ人間」に生まれ変わるために必要な「感受性を持つ生命体」への変化をもたらす神の意志が、この女性の象徴であるということですね。

It is through her imputed lapse that man shall arise ultimately, and only by her can he complete himself.
人間が結局生まれるであろうことは、彼女に帰された過ちに通じている。そして、彼女によってのみ、彼は彼自身を完成することができる。

 人類は、この女性の持つ作用により、人間として新たに誕生しました。そしてさらに人間として完成するためには、再びこの女性と出会う必要があるということですね。
 なんか、ロマンチックですな。

 まあ、堕落の原因となった女に再会して、さらに究極の堕落が完成するというのは、男にとって最高のロマンというわけですかね。(笑)

The card is therefore in its way another intimation concerning the great mystery of womanhood.
このカードは、その面においての結果として、女性の偉大な神秘に関するもう一つの暗示をしている。

 もう一つの暗示って、何なんでしょうね。
 実際何なのかは分かりませんが、この女性との神秘的合体による神界への回帰なのかも。

 とはいえ、男性にとっては、女性は永遠かつ偉大な神秘であるわけですが・・・。(笑)

The old meanings fall to pieces of necessity with the old pictures, but even as interpretations of the latter, some of them were of the order of commonplace and others were false in symbolism.
古い絵(カード)における古い意味は、必然性がバラバラに壊れている。しかし、後期の解釈でさえ、それら(カード)のいくつか(の解釈)は陳腐な階層のものであり、そして他のものは象徴性において間違いである。

 古い絵のものは「marriage/結婚」であり、後期のものは「man between vice and virtue/悪徳と美徳の間の男」でした。
 それらは、根本的に間違ってるよ、と言いたいわけですね。
 もう分かったって(笑)。


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