パワーストーンよもやま話H

レインボーカラーの正体


 空にかかる虹の七色が、地上の石に現れるとしたら・・・。
 もちろん、とってもきれいですし、それなりに役にも立つのでした。


透明石の七色のきらめきは光の分散効果で


ジルコンの光芒
 空にかかる虹の原因は、空気中を漂う透明な水滴による光の分散が原因です。
 分散というのは、光の色による屈折率の違いということなのですが、この現象はプリズムで白色を七色に分ける物理実験などで、よく知られていますね。
 同じように、透明な石であれば、光の分散により、多少なりとも七色に光ります。
 屈折率の大きく分散も大きいダイアモンドや透明なジルコンなどで、サイズの大きなものは、結構きれいに七色の光芒が見られます。
 でも、水晶や普通のガラスでは屈折率も分散もそれほど大きくないので、よく見ないと七色の光芒が見えなかったりしますね。ブリズムもガラスでできていますが、これは屈折率と分散の大きい材質のガラスを使っているのです。

オパール(蛋白石)の七色の輝きは光の回折効果で

 オパールは、水晶や石英と同じく二酸化ケイ素(SiO2)が成分で、非常に細かい非結晶質の粒が集まったもので、オパール特有のカラフルな色は、光の波長(0.5μm程度)と同程度の極めて微細な球状粒子が規則的に並んでいるため、光の回折現象により、特定の光を強く反射するものです。
 球状粒子の大きさにより、反射する光の波長が決まりますので、オパールには特定の色が見えるのですね。
 今では、この構造を再現した人工オパールも製造されています。

ラブラドライト(曹灰長石の)は光の干渉効果で

 ラブラドライトは、斜長石の一種で、アルバイト(NaAlSi3O8)とアノーサイト(CaAl2Si2O8)という二つの異なった成分の結晶が互いに層状に積み重なり光を干渉させるために、特定の光の色を強く反射させているものです。

水晶に膜を付けた飾り物
 原理的には、シャボン玉や水面上の油膜が七色に輝いたりするのと似た現象ですが、近頃ではこの原理を使って、石の表面に薄い膜を人工的に付けることにより、鮮やかなレインボーカラーを出しているものが、販売されています。
 最初にこれを見た時は、何の石かわからなかったのですが、良く見ると元の結晶形が分かるので、そういうのも面白いです。
なお、ラブラドライト以外にも、干渉効果を示す石はいくつかあり、それらはとてもきれいに輝くので、装飾用には面白いです。水晶などの透明石で、内部に亀裂のあるものは、その部分で光が干渉し、七色に光る場合もあります。

ちと脱線・・・現代のレインボーカラー

 レインボーカラーは、光の効果によるものですが、その性質を利用して、色々なものに使われています。

・光の分散を利用したもの

 光の分散を積極的に利用したもので最も有名なのは、白色光を分解する時に使うプリズムがあります。
 ただ、産業分野では、どちらかというと分散現象は嫌われることが多いのでした。なぜかというと、光の屈折を利用したレンズにも分散が現れてしまい、例えば写真を撮ると、写真がレインボーカラーになってしまうのでは困ります。そうならないように、色々な材質のレンズを何枚も組み合わせて、分散が少なくなるようにレンズを設計するのでした。

・光の回折を利用したもの


CD盤のレインボー
 現代において虹色カラーですぐに思いつくのは、CD盤やホログラム。
 実は、これはオパールと同じ光の回折によるものです。
 光の回折を直接的に利用した光学素子に、回折格子というものがあります。これは光のスペクトルを分解する時に使われるもので、様々な分析装置に使われています。
 また、ホログラムは、この光の回折を利用して、様々な像が見えるようにしたものです。
 ちなみに、CD盤が七色に光るのは、その微細構造が結果的に光の回折を起こしているものであり、積極的に効果を利用したものではありませんが、見た目がきれいという付加価値はありますよね。
 この回折現象を利用すると、粒子の大きさを測定することができます。光より波長の短いX線を使って、結晶中の分子や原子の並びも観測できるので、その原理を使った測定機械も作られているのでした。

・光の干渉を利用したもの

 ラブラドライトのような層構造膜の光の干渉を利用するもので、特定の色の光を反射したり透過させることのできる「高反射膜」や「反射防止膜」「多層膜フィルタ」というのがあります。
 ほとんどのレンズは、光の反射損失を防ぐために「反射防止膜」が付けられていますし、テレビカメラなどで赤・緑・青の三原色に光を分解する「ダイクロックミラー」という光学素子は、この原理を利用して光を分解していますし、ハロゲンランプなどに使われる赤外線反射膜は、電球から感じる熱さを軽減したり、ランプの発光効率を高めるために使われています。
 実をいうと、結晶における干渉現象と回折現象は、同じような原理に基づいています。詳しくは、結晶関係の本を参考にして下さいね。

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