ライダーウェイト・タロット解説

Ace of Cups / 杯のエース



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The waters are beneath, and thereon are water-lilies; the hand issues from the cloud, holding in its palm the cup, from which four streams are pouring; a dove, bearing in its bill a cross-marked Host, descends to place the Wafer in the Cup; the dew of water is falling on all sides.
海が下方にあり、その上に睡蓮がある。手が雲から出現し、その手のひらはカップを支え、そのカップから4つの水流が流れ出している。聖なる十字のしるしのある聖体をくわえたハトが、カップに聖餅を置くために下っている。水の雫が四方に落ちている。

 「The waters/海」は、現実世界の海を示すものではないことは明らかですね。
 これは、天上世界にある「母なる海」を示します。
 そして、「four streams/4つの水流」は、「旧約聖書:創世記』2:10の「 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。」の部分が元になっています。

 「dove/ハト」、特に白いハトは、精霊=神の代理を象徴するものとして、よく描かれます。

 さて、この場面は、キリスト教の儀式である「聖体拝領」を象徴しているのも明らかですね。
 聖体拝領では、杯はぶどう酒を入れた聖杯(カリス)であり、ホスチアと呼ばれる薄いウェハース(パン)が聖体です。
 そして、この儀式は、『新約聖書:マタイ福音書』26:26-28の「一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、賛美の祈りを唱えて、それを裂き、弟子たちに与えながら言われた。「取って食べなさい。これはわたしの体である。」また、杯を取り、感謝の祈りを唱え、彼らに渡して言われた。「皆、この杯から飲みなさい。これは、罪が赦されるように、多くの人のために流されるわたしの血、契約の血である。」というイエスの「最後の晩餐」をモチーフとしたものであることも有名ですね。

 ただし、ここでは「最後の晩餐」のような暗いイメージではなく、どちらかと言うと、イエス・キリストの洗礼の場面のようにも思えます。


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キリストの洗礼(Baptism of Christ)
Andrea del Verrocchio and Leonardo da Vinci Leonardo da Vinci

It is an intimation of that which may lie behind the Lesser Arcana.
それは、小アルカナの背後に横たわっているかもしれないものを暗示している。

 このカードに限らず、各エースのカードは、大アルカナに通じている部分を持ちます。
 ただし、他のスートと比べると、杯のエースは、より神秘的なデザインに満ちていますよね。

Divinatory Meanings: House of the true heart, joy, content, abode, nourishment, abundance, fertility; Holy Table, felicity hereof.
占いの意味(正位置):真実の心の家、喜び、満足、住居、滋養物、裕福、肥沃。聖体拝領台、これの至福。

 「House of the true heart/真実の心の家」とは何かと、キリスト教徒に問えば、間違いなく「教会」と答えるでしょうね。
 いずれにしても、正しい心を持つ人が集まる場所と考えることができます。
 そして、安定した幸せを意味するものですね。

Reversed: House of the false heart, mutation, instability, revolution.
逆位置:間違った心の家、変化、不安定、革命(循環)。

 こちらは、不安定な状態を表しています。
 これは、エデンの園を追放されたアダムとエバの物語を連想させます。


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