ライダーウェイト・タロット解説

§9 THE METHOD OF READING BY MEANS OF THIRTY-FIVE CARDS
35枚のカードの方法による占い法


 さて、この本の最後のセクションです。
 最後に後書きもありますので、残さず目を通していってくださいね。

When the reading is over, according to the scheme set forth in the last method, it may happen-as in the previous case-that something remains doubtful, or it may be desired to carry the question further, which is done as follows:--
先程の方法で説明した図式に従って、(カードの)読解が終わった時に、以前(§7)の場合のように、何かが疑わしいままで残ることが起きたり、さらに先へと質問を進めることを希望することがあるかもしれない。それは、以下のように行われる。

 直前の§8で説明している方法で、一度の展開だけで、満足できる答えが見つからない時に、さらに詳しく先を見るには、どうすればいいかということですね。
 §7では、最終結果のカードを象徴カードとし、再度占いをするということが提案されていました。

Take up the undealt cards which remain over, not having been used in the first operation with 42 cards.
最初の42枚のカードによる作業で使用されず、ずっと残っていた、分配されていないカードを取り上げなさい。

 §8のスプレッドでは、42枚のカードと1枚の象徴カードが使用されますので、残っているカードは78−42-1=35枚ですね。

The latter are set aside in a heap, with the Querent, face upwards, on the top.
後のものは、(テーブルの)上部に、表を上向きにして、一つの山にして質問者のそばに置かれる。

 §8で展開された43枚のカードは、ひとまとめの山にして、テーブルの上の方、すなわち向かい側にいる質問者の前に置いておきます。
 こうすることで、テーブルの中心に残りのカードを展開するスペースを確保するということですね。

The thirty-five cards, being shuffled and cut as before, are divided by dealing into six packets thus:--
35枚のカードは、前と同じようにしてシャッフルされカットされて、以下のように6つの山に配分され割り振られる。

 前と同じく、上下もしっかりと混ざるようにしてカード全体をシャッフルし、質問者に左手でカットしてもらいます。
 その後、以下の手続きで、6つの山に分配します。

Packet I consists of the first SEVEN CARDS
1番目の山は、最初の7枚のカードから成る。

 35枚のカードから最初の7枚を取ります。
 どこに置くかは明記されていませんが、テーブルの下の方、すなわち占い作業者の手元の側で、一番右側にその山を置き、テーブルの中央は、最後にカードを展開するためのスペースとして空けておくのがいいと思います。

Packet II consists of the SIX CARDS next following in order; Packet III consists of the FIVE CARDS following; Packet IV contains the next FOUR CARDS; Packet V contains Two CARDS; and Packet VI contains the last ELEVEN CARDS.
「2番目の山」は、順番に次に続く「6枚のカード」から成る。「3番目の山」は、次に続く「5枚のカード」から成る。「4番目の山」は、次の「4枚のカード」を含む。「5番目の山」は「2枚のカード」を含む。そして、「6番目の山」は、最後に残った「11枚のカード」を含む。

 ここは単純に、決められた枚数で割り振っていくだけです。

The arrangement will then be as follows:--
その時の配置は、以下の通りになるであろう。

 これらのカードの山が、占い作業者の手元に並ぶということになります。

Take up these packets successively; deal out the cards which they contain in six lines, which will be necessarily of unequal length.
これらの山を次々と取り、カードを6つの列に配分しなさい。それらは、必然的に等しくない長さのものになるであろう。

 並べ方については明記されていませんが、ここは、前(§8)と同じように、1番目の山を、最上部の列として右から左へと並べ、2番目の山を、その下の列として並べるということでいいと思います。

 §8での最終展開を真似て、それぞれの山から1枚ずつ取ってシャッフルして並べてもいいのですが、ここではそういうふうには書かれていませんので、普通にそのまま並べることでいいと思われます。

THE FIRST LINE stands for the house, the environment and so forth.
「1番目の列」は、家や環境などを表す。

 ここは、対象に割と近いものを示しています。

THE SECOND LINE stands for the person or subject of the divination.
「2番目の列」は、この占いに関する人あるいは対象を表す。

 ここは、対象そのものを示しています。

THE THIRD LINE stands for what is passing outside, events, persons, etc.
「3番目の列」は、外側を通り過ぎるもの、出来事、人々などを表す。

 ここは、対象から離れているものを示しています。
 外にあるけれども、それなりの影響を及ぼすものということですかね。

THE FOURTH LINE stands for a surprise, the unexpected, etc.
「4番目の列」は、驚くべきこと、思いがけないこと、などを表す。

 予想外であったり、突然起こることなどを示しています。
 ここは、ちょっと不吉な感じのポジションになりますね。

THE FIFTH LINE stands for consolation, and may moderate all that is unfavourable in the preceding lines.
「5番目の列」は、慰めを表し、前述の列にある好ましくないもの全てを穏健にするかもしれない。

 今までの1〜5列にある悪いものを、ここである程度まで中和することができるという、ご都合主義的なポジションですが、使えるカードは2枚です。

THE SIXTH LINE is that which must be consulted to elucidate the enigmatic oracles of the others; apart from them it has no importance.
「6番目の列」は、その他の不思議な神託を解明するために考慮しなければならないものである。 それらを別とすれば、それには重要性が無い。

 展開されたカードの中に、解釈しずらいものがあったり、1〜5列の中には当てはまらない事柄を見ようとする場合のオプション的な使い方という感じですかね。
 まあ、占いの本筋には、あまり重要な関わりを持たないようですので、何か困った時の予備役として見るのがいいかも。

These cards should all be read from left to right, beginning with the uppermost line.
これらのカードは、一番上の列で始まり、左から右とへと全て読解されるべきである。

 §8では、右から左へと読んでいましたので、この違いは注意です。
 なんで、そうなるのかは分かりませんけど、この章におけるウェイト氏の説明自体が、かなり適当ですので、占う人自身で適当にアレンジしても構わないと思いますけどね。

It should be stated in conclusion as to this divinatory part that there is no method of interpreting Tarot cards which is not applicable to ordinary playing-cards, but the additional court cards, and above all the Trumps Major, are held to increase the elements and values of the oracles.
この占いの部において、普通のトランプカードに当てはまらない「タロット」カードを解釈する方法は無いと結論として述べられるべきである。しかしながら、追加のコートカード、そして何よりも「大アルカナ」は、神託の要素と価値を増加することを持たされている。

 「this divinatory part/この占いの部」は、この本のPartVのことになります。
 ここは、ウェイト氏の大好きなオカルト分野のネタではなく、金稼ぎのための仕事としてやってる占いの話なんですよね。
 今も当時も、マジメなオカルト記事を書くだけでは食っていけず、こういう占いに関する記事の方が売れるということです。
 あと、「the additional court cards/追加のコートカード」は、「Knight/騎士」のカードのことですね。

 ちょっと回りくどい文章になってますが、要約すると、「タロット占いの手法は、事実上、トランプ占いと何ら変わるところは無い。騎士と大アルカナが加わったことで、占いに対する神秘感が増えているだけである。」ということになります。
 回りくどい上に、かなり突き放した感じの文章になっています。
 確かに、PartTやPartUにおける、あの生き生きと神秘世界を自慢げ(←ここ重要)に語るウェイト氏とは、別人のような語り口ですからね。

 ウェイト氏は、実際に世間で行われていたタロット占いについては、かなり懐疑的な見方をしていますので、タロット占いとトランプ占いをミソクソ的に混合していた当時のカード占い師を、遠回しに揶揄しているような感じですかね。
 トランプ占いよりも、タロット占いの方が一見して豪華ですので、そういう意味での価値観を求めて占いをやっている人もいますけど、そういう人の占いって、トランプの代用としてタロットカードを使った占いにすぎないものですしね。
 とはいえ、この本やカードを買ってくれる顧客のほとんどは占い好きの人や占い師ですので、直接的な表現は避けたのではないかと思いますが、そういった遠回し表現らしきものは、この本のあちこちに見られます。
 私も、「おまえら、きちんと分かってやってるのかよ〜!!」ってツッコミを入れたくなることは、よくありますが。(笑)

 とりあえず、占いに関する回りくどい説明は、ここで終わりです。
 後は、この本の締めくくりの文章が続きます。

And now in conclusion as to the whole matter, I have left for these last words--as if by way of epilogue--one further and final point.
さて、全体の内容に関する結論の中に、…エピローグのつもりで…私は最後の言葉として、一つ先にあり最終的な論点を残しておくことにする。

 この本には、導入部はありましたが、エピローグ(終章)はありません。
 ということで、ここでいきなり締めの言葉が入ります。
 なぜエピローグを、わざわざこの占いの部の最後に書いたのかは、最後まで読めばわかります。

It is the sense in which I regard the Trumps Major as containing Secret Doctrine.
それは、私が「大アルカナ」は「秘密の教義」を含んでいると考えているという意見である。

 ここでの「sense/意見」は、感情的とか、漠然とした感覚的なものではなく、かといって合理的ということでもないけれども、直観的には確信しているという感じの主張ということです。
 「Secret Doctrine/秘密の教義」といえば、外部の者には容易に知られないような、秘密の教えがあるということで、すなわち大アルカナの絵の中には、「文字にならない何か」が含まれているということですね。

I do not here mean that I am acquainted with orders and fraternities in which such doctrine reposes and is there found to be part of higher Tarot knowledge.
これについては、私が、そのような教義を密かに伝えていて、より高いタロットの知識の一部となるものを見つけ出したと称する結社や友愛会と知り合いであると言うつもりは無い。

 これは、とある魔術団体(黄金のなんちゃら・・・)のことを指しているようにも見えますが、おそらく当時のオカルト関係全般において、自分たちの権威を高めるために、何か有名な存在を引き合いに出すのは、定番でしたし、今でもオカルト系の団体は、同じような手法を使って、人々を欺いていますよね。

 ウェイト氏は、オカルト系の団体とは、それほど深くは付き合ってはいなかったようですが、一応はオカルト系の著作もある有名人だったので、色々な人と、それなりの付き合いがあったのだと推定できます。だからこそ、そういう人達とは、表面的には、一定の距離を置いておきたかったのでしょうね。

 とはいえ、「私は〜であると言うつもりは無い」と書いていること自体が、「私は、そうであると言いたい!」という気持ちの裏返しですので、ウェイト氏には、本当は色々と付き合いを自慢したい人や団体があるのでしょうね。(笑)

I do not mean that such doctrine, being so preserved and transmitted, can be constructed as imbedded independently in the Trumps Major.
私は、そのようにして保護され伝承されたそのような教義は、「大アルカナ」の中に独自に埋め込まれているようになっていて、構成されていることができると、言うつもりは無い。

 ここも、明らかに「私は、そうであると言いたい!」という気持ちの裏返しですよね。
 というか、既にこの本の中にも、色々とネタを書いていますので、わかる人にはわかるようになっています。

I do not mean that it is something apart from the Tarot.
私は、それが「タロット」とは離れた何かであるとは、言うつもりは無い。

 秘密の教義は、タロットの中に埋め込まれたとも言わないし、タロットとは全く別のところにあるとも言わない。
 つまり、オレは断言しないけど、オマエ自身の頭で考えて判断しろ、と言いたいわけですよ。
 結論から言うと、タロットの中にもあるし、タロットの中には無いものもあるということが言いたいわけですよね。

 普通のタロット占いの宣伝本ならば、ここは間違いなく「タロットは万能であり、宇宙の神秘を全て含んでいる」と言っているところですが、ウェイト氏は、タロット以外にも色々とオカルトの知識はありますし、他の著作もありますので、そういう自己欺瞞的というか墓穴的な表現は避けているのでしょう。

Associations exist which have special knowledge of both kinds; some of it is deduced from the Tarot and some of it is apart therefrom; in either case, it is the same in the root-matter.
両方の種類に関する特別な知識を持っている結社は存在している。 そのいくつか(の結社)は、タロットから推論しており、(別の)いくつか(の結社)は、それからは離れている。どちらの場合であれ、それは根底の問題においては同じことである。

 「both kinds/両方の種類」というのは、タロット内部に含まれる「秘密の教義」と、タロットには含まれていない「秘密の教義」の2種類のものを指しています。
 そして、タロットを利用している結社もあるし、利用していない結社もあります。
 どちらも、その基礎となっている部分は、実は同じようなものを持っていると言っているわけですよね。
 まあ、「秘密の教義」と言っても、いわゆる人間が考えて伝えてきたものですので、結局は同じようなものになってしまいます。 

But there are also things in reserve which are not in orders or societies, but are transmitted after another manner.
しかしながら、結社や団体の中には蓄えられていないものもあるが、それは別の方法に従って伝承されている。

 団体の組織の中では伝授できないような、特別な「秘密の教義」というものもあるけれども、そういうものは、また特別の方法で伝授されていくことがある、と言っています。
 きわめて特殊な才能に恵まれた者だけが伝授できる「秘技」みたいなものとか、特定用途に特化した「専門的超能力」とかいうものですかね。

Apart from all inheritance of this kind, let any one who is a mystic consider separately and in combination the Magician, the Fool, the High Priestess, the Hierophant, the Empress, the Emperor, the Hanged Man and the Tower.
この種類のすべての遺産は別として、神秘的な能力のある者はだれでも、単独に、および組み合わせて、「魔術師」、「愚者」、「高等女司祭」、「法王」、「女帝」、「皇帝」、「吊られた男」、そして「塔」を熟慮しなさい。

 そういう団体に入っていなくて「秘密の教義」の存在を知らない人や、個人的な伝授も受けていない人であっても、もし神秘的な潜在能力がある人であれば、タロットカードの絵をじっと見つめて深く考えてみてください、と言っているわけですよね。

Let him then consider the card called the Last Judgment.
それから、彼(神秘的な能力のある者)に、「最後の審判」と呼ばれるカードを熟慮させなさい。

 そして、最後に、「最後の審判」をじっと見て考えるわけですね。
 さて、そこには一体何があるのでしょうか。

They contain the legend of the soul.
それらは魂に関する伝説を含んでいる。

 ウェイト氏によると、そこには人の魂の誕生と成長と死と再生の物語があるそうです。

The other Trumps Major are the details and--as one might say--the accidents.
残りの「大アルカナ」は、その詳細であるというか、…言うなれば…付随的な事である。

 ウェイト氏によれば、大アルカナにも、主役と脇役があり、序列があるということですよね。
 まあ、こういう分類は、色々なパターンがありますので、これにこだわる必要は無いと思います。

Perhaps such a person will begin to understand what lies far behind these symbols, by whomsoever first invented and however preserved.
おそらく、そのような人は、誰かによって最初に考案されたけれども保護されているこれらの象徴の、はるか遠い背後にあるものを理解し始めるであろう。

 えーっと・・・・。
 このライダーウェイト版タロットをデザインしたのは、ウェイトさん、あなたですよね〜。
 「誰かによって最初に考案されたけれども保護されているこれらの象徴」って、あなたが作った象徴ではないんですかぁ?
 これは明らかに、読者に対するウェイト氏の挑戦状みたいなものですよね。
 「神秘的な能力のある者」だけが、「私が考えた象徴の意味を理解できる」と言いたいわけですよね。

If he does, he will see also why I have concerned myself with the subject, even at the risk of writing about divination by cards.
もし、彼がそうすれば、私がカードによる占いについて書くという危険を冒してまでこの題材に携わった理由を理解するだろう。

 ここも、「神秘的な能力のある者」だけが、ウェイト氏の本当の意図を知ることができるということですよね。
 つまり、PartVのタロット占いの記事は、読者を引きつけるための「釣り餌」であって、実際に知ってほしいのは、その背後にある「オカルト=神秘主義」であるということです。

 さて、なぜウェイト氏は、独立したエピローグの章を無くして、この占いの部の最後に付加的にエピローグを書いたのか。
 それは、ウェイト氏は、ここのエピローグ部分を、ぜひとも多くの読者に読んで欲しかったということです。
 占いをメインにやってる人は、占いの部であるPartVに書かれているカードの意味と展開方法だけが知りたいのであって、PartTやPartUに書かれている本当の歴史や、難しい神秘主義とかには興味がないんですよね。

 ウェイト氏は、生粋のオカルト分野での研究者であり、このライダーウェイト版タロットと本にかけた執念の本気さというのも感じられます。(もちろん、お金になる=数多く売れるということも大事にしているとは思いますけどね。)
 それゆえ、いわゆる「魔術の世界」や「占いの世界」からも、ちょっとだけ距離を置いて、独立した立場でのオカルト研究の成果としての、ライダーウェイト版タロットと、この本は、もっと評価されてもいいと思うんですけどね。

 このタロットや本は、占いに使うには難しすぎるから、もっと素人でもわかりやすいように簡単に書けばいいのに、という意見もありますが、それでは単なる占い遊び用のカードとその付録本ということになってしまい、それはウェイト氏の真の目的ではないということになります。

 でもまあ、タロットはしょせんタロットですので、読者は自分の好きな道を選べばいいと思います。
 タロットのことをオカルト的に深く知っているからと言って、それを世間で自慢してもアホと言われるだけですからね。(苦笑)


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